
カンジダ菌の生産をストップ!エンペシドクリーム・膣錠の作用
なぜ、エンペシド(クリーム・膣錠)はカンジダ症などの原因である真菌に効果があるのでしょうか。それは、エンペシドの主成分であるクロトリマゾールが関係しています。クロトリマゾールは、真菌に対してどのような働きをするのか、作用から作用機序まで詳しく紹介しましょう。
エンペシド(クリーム・膣錠)の主成分はクロトリマゾール
エンペシド(クリーム・膣錠)は主にクロトリマゾールという成分が含まれています。クロトリマゾールは、アゾール系の抗真菌薬です。アゾール系抗真菌薬は真菌細胞膜の機能を妨害する作用があります。
エンペシド・クリームの成分
成分/含量 | クロトリマゾール/10mg(1g中) |
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添加物 |
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エンペシド・膣錠の成分
成分/含量 | クロトリマゾール/100mg(1錠中) |
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添加物 |
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参考:エンペシドクリーム1% 添付文書 / バイエル薬品株式会社:PDF
参考:エンペシド膣錠100mg 添付文書 / バイエル薬品株式会社:PDF
クロトリマゾールの作用機序
クロトリマゾールは、なぜカンジダ症の原因である真菌(カンジダ菌)の増殖を防ぐことができるのでしょうか。それは、クロトリマゾールに「相手を選んで毒性を発揮する」という特徴があるからです。クロトリマゾールの特徴から作用機序まで詳しく説明しましょう。
クロトリマゾールは相手を選んでやっつける
エンペシド(一般名:クロトリマゾール)の特徴は、「カンジダ菌に対しては毒性を発揮するが、人体に対しては毒性を示さない」ことです。なぜ、クロトリマゾールは、カンジダ菌にだけ毒性を発揮するのでしょうか。それは、カンジダ菌(細菌細胞)と人(ヒト細胞)との「細胞の違い」を利用しているからです。
カンジダ菌(細菌細胞)と人(ヒト細胞)の違い
カンジダ菌の細胞と人の細胞には、いずれも細胞膜が存在します。細胞膜は細胞の内側と外側の環境を分ける役割があります。人の細胞膜は「コレステロール」と呼ばれる物質によって構成されています。一方でカンジダ菌の細胞膜は「エルゴステロール」と呼ばれる物質によって構成されています。このように、カンジダ菌の細胞と人の細胞には、細胞膜を構成している物質に違いがあるのです。

クロトリマゾールはエルゴステロールを邪魔する
カンジダ菌だけに毒性を与える、つまりカンジダ菌だけを邪魔するには、人の細胞膜(コレステロール)には反応せずに、カンジダ菌の細胞膜(エルゴステロール)にだけ反応する必要があります。この働きをする薬が抗真菌薬(クロトリマゾール)なのです。
クロトリマゾールがカンジダ菌の細胞膜(エルゴステロール)を作られないように邪魔をすることで、カンジダ菌の増殖をおさえることができるのです。
参考:病原性真菌の構造構築 と生化学的特性:細胞壁, 脂質 と二形性, 抗真菌剤の作用点 / 北島康雄(岐阜大学医学部皮膚科学教室):PDF
まとめ
エンペシド(クリーム・膣錠)は主に、クロトリマゾールという成分が含まれています。
クロトリマゾールにはエルゴステロールの生産をストップさせる作用があります。エルゴステロールは真菌の細胞膜をつくるのに必要不可欠な物質です。そのため、クロトリマゾールが作用すると、真菌細胞が作られなくなり、真菌は生存ができなくなります。
このように、真菌が体内から排除されることによって、痒みやただれ等の真菌の症状が改善されます。