
性器クラミジア感染症の基礎知識
性器クラミジア感染症は、性感染症の中でも特に多い病気です。性行為によって感染し、多くの場合、目立った症状があらわれません。しかし、悪化すると、男性は精巣上体炎、女性は子宮頸管炎や不妊、流産など、重い病気につながる恐れがあるのです 。
この記事では、性器クラミジア感染症について解説します。症状や感染の原因、対処法を知り、いざというときに備えましょう。
性器クラミジア感染症ってどんな病気?
性器クラミジア感染症とは、「クラミジア・トラコマチス」という細菌が引き起こす性感染症(STD)です。フェラチオやクンニリングスなどの、オーラルセックスを含めた性行為によって感染します。
出典:性器クラミジア感染症とは / 国立感染症研究所 ![]()
性器クラミジア感染症は、多くの場合、目立った症状があらわれません。また、発症するとしても、感染からおよそ3週間かかります。そのため、感染していることに気づきにくく、知らぬ間に感染を広げてしまう恐れがあるのです。
毎年2万件も報告されている!
性器クラミジア感染症は、性感染症の中でも特に患者数が多い病気です。以下のグラフは、厚生労働省が発表している、性器クラミジア感染症の報告数をまとめたものです。
上の表を見ると、2017年には、男女合わせて24825人もの人が性器クラミジアに感染しているのです。また、統計を見ると、男性よりも女性の方が、報告数が多いことがわかります。
目立った症状がでないから感染に気づきにくい!
性器クラミジア感染症は多くの場合、はっきりとした症状が出ないため、感染に気づきにくいのが特徴です。感染者のうち、男性は50%から60%、女性は80%の確率で症状があらわれないとされています。
性器クラミジア感染症が発症した場合の症状は、男女で異なります。性器クラミジア感染症の症状について見てみましょう。
男性は尿道炎が起こる
男性が性器クラミジア感染症にかかった場合の、主な症状は尿道炎です。尿道炎が起こると、以下の症状がみられます。
男性の性器クラミジア感染症の症状
- 尿に膿みが混じる
- 排尿時に痛みや痒みを感じる
尿道炎は淋菌やヘルペスウイルスによって起こる場合もあります。症状が出ないことが多く、発症しても軽度な場合がほとんどです。しかし、放置していると感染が広がり、以下の病気を引き起こします。
性器クラミジア感染症によって起こる男性の病気
- 精巣上体炎
- 精嚢炎
精巣上体炎にかかると、陰嚢に強い痛みが起こり、最悪の場合、陰嚢を切除する事態にも発展します。精嚢炎は排尿痛や頻尿、発熱といった症状があらわれます。
女性は重症化しやすいので注意!主な症状はおりものの増加
女性が性器クラミジア感染症を発症した場合、まれに以下の症状があらわれます。
女性の性器クラミジア感染症の症状
- おりものの増加、変色
- 生理痛のような軽い痛み
- 不正出血
- 骨盤内炎症性疾患
女性は男性よりも症状に出にくく、放置されやすい傾向にあります。性器クラミジア感染症が悪化すると、以下の病気が併発する恐れがあります。
性器クラミジア感染症によって起こる女性の病気
- 子宮頸管炎
- 子宮内膜炎
- 卵管炎・卵巣炎
- 子宮付属器炎
- 骨盤腹膜炎(骨盤内炎症性疾患)
- 肝周囲炎
クラミジア・トラコマチスは女性器から身体の奥に感染を広げていき、卵管周囲癒着や卵管閉塞など、様々な重い症状を引き起こすのです。
出典:クラミジア感染症 / TAIPEI STYLE(台北スタイル) ![]()
これらの病気は、不妊や早産、流産につながる恐れがあります。また、出産に成功した場合も、子供がクラミジア・トラコマチスに感染した状態で生まれてくる恐れがあります。
喉に感染する場合も
クラミジア・トラコマチスは、喉に感染し、咽頭クラミジアを引き起こす場合もあります。主な症状は、喉の痛みや腫れ、発熱などです。症状が出る頻度は低く、風邪の症状と似ているため、風邪や扁桃腺炎と誤診されることがあります。
感染の原因は性行為による患部の接触
性器クラミジア感染症の感染経路は、オーラルセックスを含めた性行為です。また、妊婦が感染した場合、新生児も感染してしまいます。妊婦に感染したクラミジア・トラコマチスが産道に繁殖し、出産時に新生児と接触してしまうのです。
クラミジア・トラコマチスは、人間の細胞内でしか生きられないという性質があります。基本的には性行為による粘膜の接触がない限り、感染することはありません。握手やハグ、タオルの使い回しなどで感染する心配もありません。

クラミジアかも?と思ったら検査が必要
「性器に違和感がある」「おりものが増えた」「相手がクラミジアに感染していたと後で知った」など、性器クラミジア感染症が心配な場合は、検査で感染の有無を確認しましょう。病院で検査を受けるのが基本ですまた、検査キットを購入し、自分で検査することも可能です。
検査は性病科で!泌尿器科や婦人科でも
性器クラミジア感染症の検査を受け付けているのは性病科です。男性であれば泌尿器科、女性であれば婦人科、産婦人科でも検査を受けることができます。咽頭クラミジアの疑いがある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
自分で検査できる検査キットが売られている
検査キットを使えば、病院に行かなくても、クラミジア・トラコマチスに感染しているかどうかを検査することができます。
検査キットには専用の器具と申込書が入っており、器具で患部の粘膜を採取し、申込書に必要事項を記入して、検査所に郵送します。申込書に氏名を書く必要がないため、匿名で検査できるのが特長です。
検査キットはAmazonなどの通販サイトで購入できます。また、個人輸入を利用すれば、より安く入手できます。
性器クラミジア感染症は薬で治療できる
性器クラミジア感染症は、薬で治療できます。手術や特別な処置はおこなわれません。性器クラミジアの治療薬を使えば、およそ1週間で体内のクラミジア・トラコマチスが排除されます。2週間から3週間後に検査を受け、菌が見つからなければ、完治したことになります。
パートナーも一緒に治療する
性器クラミジア感染症の治療の際は、パートナーにも必ず治療を受けてもらいましょう。性器クラミジア感染症は、性行為によって感染するため、自分が感染した場合、パートナーにも菌がうつっている可能性があります。どちらか一方だけが治療を終えても、性行為によって再び感染してしまい、キリがありません。クラミジア・トラコマチスに感染したとわかったら、パートナーと一緒に治療を受けましょう。
性器クラミジアの薬
性器クラミジア感染症の治療で主に使われるのは、「マクロライド系抗生物質」「テトラサイクリン系抗生物質」と呼ばれる抗生物質です。これらの薬は、細菌が体内で増殖できなくする働きがあります。 菌がそれ以上増えなくなり、残った菌は、身体の免疫機能によって排除されます。
一番効果が高いのはジスロマック
性器クラミジア感染症の治療でよく使われるのはマクロライド系抗生物質の「ジスロマック」です。有効成分として「アジスロマイシン」という物質が含まれています。効果が長く続くため、飲む回数が1回だけでいいのが特長です。ただし、クラミジア・トラコマチスの中には、ジスロマックが効かない耐性菌も存在します。
ジスロマックはジェネリック医薬品も作られている
ジスロマックは、ジェネリック医薬品が多数作られています。ジェネリック医薬品は、ジスロマックと同じ効果を持ちながら、1錠あたりの値段がより安価です。性器クラミジア感染症の治療費が気になる人は、処方を受ける際にジェネリック医薬品を希望するとよいでしょう。
ジスロマックの特長や注意点について、こちらのページで詳しく紹介しています。
ジスロマックが効かなかったら別の抗生物質が使われる
ジスロマックを使っても症状が改善されない場合、別の治療薬が検討されます。ジスロマックと同じマクロライド系抗生物質の「クラビット」や、テトラサイクリン系抗生物質の「ビブラマイシン」があげられます。これらの抗生物質は、基本的な効果はジスロマックと変わりません。薬によって、男性の治療に適したもの、妊婦の治療に適したものがあります。
ジスロマックは個人輸入でも入手可能
ジスロマックは、個人輸入を扱っている通販サイトでも入手できます。性病にかかったことが周囲に知られずに済むだけでなく、病院で処方を受けるよりも費用を抑えられます。
ただし、通販サイトには偽造品を扱っている悪質なサイトもあるので、注意しなければなりません。また、用法・用量を守って使わないと、治療に失敗するだけでなく、耐性菌を発生させてしまう恐れがあります。性器クラミジア感染症にかかったら、基本的には病院を受診しましょう。

コンドーム着用&むやみな性接触を避けて予防
性器クラミジア感染症を予防するためにも、性行為の際は必ずコンドームを着用しましょう 。また、自分や相手が性器クラミジア感染症にかかった、あるいは感染が疑われる場合は、性行為は控えましょう。
クラミジア・トラコマチスは、性行為による粘膜の接触によって感染します。逆に言えば、性行為を避ければ相手を感染させたり、相手から感染させられたりすることもありません。