公開日
2016/07/12
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性器クラミジア感染症にかかる原因は性行為だけ?
クラミジアが流産や不妊の原因になる?

クラミジアには性行為による粘膜同士の接触や、精液、膣分泌液が体内に入ることが原因で感染します。性行為の相手が咽頭感染(のどに感染)している場合は、ディープキスなど粘液や唾液から感染する恐れがあります。

クラミジアの疑問を解決するために、感染する原因や行為、クラミジアが原因となってかかる病気や併発しやすい疾患、原因菌であるクラミジア・トラコマチスの特徴をみていきましょう。

性器クラミジア感染症の原因・クラミジア・トラコマチス

性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌に感染することで発症するSTD(性病・性感染症)です。クラミジアの病原体であるクラミジア・トラコマチスは真菌の一種です。

クラミジア・トラコマチスの電子顕微鏡像
出典:Chlamydia trachomatisの電子顕微鏡像 / 性器クラミジア感染症とは / IDWR

クラミジア・トラコマチスの特徴は、偏性細胞内寄生体(へんせいさいぼうないきせいたい)という点です。偏性細胞内寄生体とは、宿主細胞のなかでしか生存・増殖することができない、という性質を持っています。

例えばキッチンに潜む大腸菌は、手拭きタオルやスポンジなどの無機物でも生存できます。逆にクラミジア・トラコマチスは、細胞のなかに入り込まなければ生きていけないくらい、非常に生命力の弱い菌です。

つまりクラミジアの基本的な感染経路は、「粘膜同士の直接接触以外ない」ことになります。

クラミジアは感染者数が最も多い性病

性器クラミジア感染症は、日本国内において最も患者数の多い性感染症(性病)です。

2015年のクラミジアの患者数は淋病の2.8倍、ヘルペスの2.7倍、コンジローマの4.2倍もある
出典:性器クラミジア感染症 / 性感染症報告数 / 厚生労働省

2015年の患者数(定点把握4性感染症の報告数)をみても、最も患者数が多い性病は性器クラミジア感染症でした。患者数は淋病(淋菌感染症)の2.8倍、性器ヘルペス(性器ヘルペス感染症)の2.7倍、コンジローマ(尖圭コンジローマ)の4.2倍もあります。

男性の5割、女性の8割は無症状

クラミジアに感染する患者は、20代の女性が最も多く、女性患者全体の6割を占めます。20歳から24歳までの女性患者数は、男性患者数の2倍近い数にのぼります。クラミジアへの感染は、男女とも性交渉が活動的な若年層に多く、女性では特に目立った傾向が出ています。

クラミジアに感染する患者は、20代の女性が最も多く、女性患者全体の6割を占める
出典:性器クラミジア感染症 / 年齢別にみたクラミジアの報告数(2015年) / 厚生労働省

女性患者の場合、15歳~19歳の患者数も非常に多く、感染率の高さが将来的な不妊につながる恐れがあります。厚労省の報告数事態も、自覚症状が出たため受診した、別の症状で受診した際に判明した患者数のみです。潜在的な患者数は数倍にのぼります。

クラミジアの症状は、男性の5割、女性の8割は無症状といわれています。泌尿器科や婦人科で診断したり治療せずにいることが多く、本人も自覚がないまま、いつの間にか恋人に感染を拡げてしまうことが多いのです。

妊婦の3%~5%はクラミジア保有者

妊婦検診において、正常な妊婦のうち、3%~5%にクラミジアの保有者が確認されています。クラミジアの自覚症状がないまま妊娠した患者がほとんどです。

妊婦の3%~5%はクラミジア保有者

2015年に日本国内で生まれた日本人の赤ちゃんは100万8,000人でした。当然赤ちゃんとほぼ同数の妊婦がいるので、このうち3%~5%(3万人~5万人)の妊婦がクラミジア保有者ということになります。

厚労省に報告されている、20歳~40歳までの患者数よりも明らかに多い数です。妊娠してから検査をおこなうまで、クラミジアに一切気がつかない女性が毎年数万人いる、という計算になります。

クラミジアに感染する原因や行為

クラミジアには性行為による粘膜同士の接触や、精液、膣分泌液が体内に入ることで感染します。粘膜が接触した時点で感染するため、射精の有無は関係ありません。コンドームなどを使っていなければ、直接挿入しただけでも感染の疑いがあります。

感染者が咽頭感染している場合は、ディープキスなど粘膜同士が接触することで、粘液や唾液から感染する恐れがあります。

  • クラミジア感染者とのセックス
  • クラミジア感染者とのアナルセックス
  • クラミジア感染者とのオーラルセックス
  • クラミジアに汚染された手で、性器やまぶたなどの粘膜に触れる

「粘膜との直接接触」と聞くと、何のことだか一見わかりにくい印象を受けます。

私たちの体で外部と接触する可能性がある粘膜には、唇、舌、口のなか(口腔)、のど(咽喉)、鼻のなか(鼻腔)、耳のなか(耳腔)、まぶたの裏(結膜嚢)、亀頭や膣(生殖器)、肛門のなか(直腸粘膜)があります。

クラミジアに感染する経路は粘膜同士の直接接触が基本です。ただし、精液や膣分泌液にもクラミジアは存在します。感染者の精液や膣分泌液などが付着したもの、精液が付いた手などで目に触れることでも、結膜炎を引き起こす場合があります。

妊婦がクラミジアに感染していると、経膣分娩の際、新生児にもクラミジアをうつしてしまう恐れがあります。

クラミジアが原因と考えられる症状

性器クラミジアに感染してしまった場合、どんな症状がでるのでしょうか?

クラミジアに感染すると、男女ともに1週間から3週間の間に、以下のような症状があらわれます。クラミジアには男女両方が感染しますが、厄介な点は男女共に自覚症状が出にくいという点です。

クラミジアが原因と考えられる男性の症状

男性の性器クラミジア感染症では、感染して数日(1週間~2週間ぐらい)のあいだに自覚症状が出ます。

男性のクラミジアの自覚症状は尿道炎
出典:性器クラミジア感染症 / 性感染症 / おとなの医学

最初に自覚症状が出るのは、おしっこを排出する尿道です。尿道が炎症を起こすため、おしっこをするときに痛みを感じる、おしっこがしみる、熱い感覚、尿道にかゆみや不快感を生じます。

おしっこに膿が混ざることもあります。色は透明か白っぽい、サラサラしていて粘り気はありません。膿だけが出るわけではなく、おしっこに混じって出てくるため、気がつかないことがほとんどです。

ここから1週間以上放置してしまうと、尿道から前立腺へ、前立腺から睾丸へ、体の奥へ奥へと菌が進んでいってしまいます。

クラミジアが原因と考えられる女性の症状

女性がクラミジアに感染した場合、感染して2週間~3週間くらいで自覚症状が出ます。

女性のクラミジアの自覚症状は出にくい
出典:性器クラミジア感染症 / 性感染症 / おとなの医学

最初に感染する場所は、膣の奥、子宮の入り口にあたる子宮頚管(粘膜)です。クラミジアに感染したことによって起こる膣炎の症状は、水っぽいおりものが増加する、性器がかゆい、においがきつくなる、性行為をすると痛みを感じるなどです。

女性の場合も男性と同様に、治療をせずに放置してしまうことで、クラミジアの菌が体の奥へと進んでいってしまいます。子宮、卵管、卵巣の順番で子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎につながります。

クラミジアが原因でかかる病気や疾患

性器クラミジア感染症が引き金となってかかる病気、クラミジアと併発しやすい疾患はあるのでしょうか?

クラミジアが原因でかかる男性の病気や疾患

男女で比較すると、症状が出ても男性の方が比較的軽症で済みます。

クラミジアが原因でかかる男性の疾患は精巣上体炎
出典:性器クラミジア感染症 / 性感染症 / おとなの医学

尿道炎(淋菌性尿道炎)は初期でも確認できる症状です。クラミジアの菌が尿道から精管、精管から精巣上体へと進むことで、精巣上体炎を引き起こします。

精巣上体炎によって陰嚢(玉袋・金玉)が痛む、陰嚢が熱を持つ、陰嚢が腫れるなどの症状があらわれます。精巣上体にクラミジアが入り込むことで、徐々に足の付根や下腹部に痛みが広がることがあります。

炎症によって精子の通路が塞がることがあります。片側だけなら問題ありませんが、両側の陰嚢で起きると不妊症(閉塞性無精子症)につながる可能性があります。

クラミジアが原因でかかる女性の病気や疾患

女性がクラミジアに感染しても初期症状はほとんど出ません。その代わりに放置してしまうと、不妊や流産の原因になるので注意が必要です。

クラミジアが原因でかかる女性の疾患は流産や早産、子宮外妊娠や子宮内膜症、不妊
出典:性器クラミジア感染症 / 性感染症 / おとなの医学

すでに妊娠していれば、クラミジアが流産や早産(切迫早産)を招く原因になります。妊娠前にクラミジアに感染した場合は、子宮外妊娠や子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮頸がんの原因になります。

クラミジア感染症自体は、薬物療法によって簡単に治る性感染症です。医師の指導のもとで治療をおこなえば、再発の恐れもありません。医療機関で処方されるクラミジアの治療薬がジスロマックです。ジスロマックは、日本性感染症学会が推奨する、男女(妊婦)ともに服用できるクラミジアの治療薬です。

クラミジアの恐ろしいところは、命に関わる病気ではないものの、完治後にも後遺症が残る場合があることです。

自覚症状がないまま放置してしまうことで、最悪の場合は不妊につながってしまいます。クラミジアに感染してから不妊になってしまうまで、最悪のルートは以下です。

  1. 子宮頸管から卵管の方まで菌が侵入する
  2. 卵管の炎症によって癒着が起きる
  3. この時点でも自覚症状が出ないことが多いため、治療されないまま放置される
  4. 卵管周囲の癒着が進行する
  5. 卵管が変形する、塞がる(卵管閉塞)、卵管采が働かなくなる(ピックアップ障害)
  6. 排卵後の卵子を取り込めなくなる
  7. 最終的には、不妊につながる

女性の不妊の原因で最も多い原因が卵管(卵管因子)だといわれています。卵管に通過障害が起きる原因のうち、実に8割が「クラミジア感染だ」とする学説もあるほどです。

逆説的にいえば、女性不妊の最も多い原因が、クラミジアに感染した経験があったため、とも言い換えることができます。