
性器ヘルペスの原因は?いつ、何で感染した?
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)に感染することによって引き起こされる性行為感染症です。
「まさか自分が性器ヘルペスになるなんて……」「性器ヘルペスの原因って性行為?」「ヘルペスが不妊症につながるの?」など、この他にも様々な不安があると思います。
性器ヘルペスとはどんな病気なのでしょうか。原因ウイルスである単純ヘルペスウイルス(HSV)の特徴や、感染経路を見ていきましょう。また、性器ヘルペスにかかるとどんな症状が出るのか、どんな病気を併発しやすいのかなども詳しく説明します。
性器ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスとは?
ヘルペスウイルスに初めて感染する、最も多い原因は性行為です。性器ヘルペスの原因となるウイルスは、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)です。HSV-2に感染する原因は、性器にできた病変部に直接触れてしまうことです。
最近ではHSV-2だけでなく、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)による性器ヘルペス患者も増えています。
本来HSV-1は上半身に感染するため、性器ヘルペスではなく口唇ヘルペスの原因と考えられていました。しかし現在では、性器ヘルペスが発症する原因ウイルスのうち、30%前後がHSV-1となっています。HSV-1が性器へ感染する主な原因は、口唇ヘルペス患者から受けたオーラルセックスなどです。
若年層で性器ヘルペスの患者が増加
以前は少なかった単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)による性器ヘルペスの増加は、性交をはじめる年齢の若年化、セックスパートナー数の増加、性行為パターンの多様化などによる影響と考えられています。
耳鼻科や皮ふ科、性病科では、口のなかにヘルペスを発症した患者が増えています。アダルトビデオや動画などで、見たり知ったりした性行為(クンニリングス、フェラチオ、膣内性交、アナルセックス、膣外射精など)を真似る若者も多いため、口から口へ、口から性器へ、性器から口へ、ヘルペスに限らず様々な性感染症が若年層で蔓延しているのです。
もはや、「性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス2型への感染で発症する」という、これまでの考えは通用しません。2種類のウイルス(HSV-1, HSV-2)ともに、性器ヘルペスの原因になると考えていいでしょう。
ヘルペスウイルスは感染力が強い
ヘルペスウイルスは感染力が非常に強いウイルスです。感染者の口や陰部などの粘膜や皮膚にあらわれた湿疹、体液などを通して感染します。

粘膜とは、皮膚とつながっている鼻、唇や口、耳、性器や肛門を指します。一般的に亀頭と呼ばれている男性器(陰茎頭部)は、皮膚ではなく粘膜に分類されます。
病変部はもちろん、粘膜からも感染する
わかりやすい感染経路は、皮膚の表面にあらわれた水泡(水ぶくれ)や潰瘍(皮膚のただれ)に直接触れることです。また、相手が慢性的なHSV感染症の患者であれば、身体の表面に変化が見られない時期でも感染する場合があります。表面的な症状が出ていなくても、口や性器などの粘膜に潜むHSVに接触することで、ウイルスに感染してしまうのです。
唾液や精液、膣の分泌物からも感染する
感染者の唾液や精液、膣の分泌物にもウイルスは含まれています。体液に含まれるウイルスの量は、患者の症状によって変化します。特に気をつける必要があるのは、皮膚の表面に水ぶくれなどの症状があらわれている時です。症状が表面化している時は、特にウイルスが多く存在しています。
症状が出にくいから、無自覚のまま感染が拡大する
ヘルペスウイルスは感染力が非常に強いものの、いざ感染してもすぐには症状が出ないことがあります。症状が出なければ、恋人やパートナーも、自身がヘルペスに感染している自覚がありません。
感染してから痛みなどの症状が出るまでに時間がかかるので、無自覚のまま感染機会が増えてしまいます。症状が少ない割に感染力は強く、それが感染拡大の原因となっています。
ヘルペスの潜在感染者は、国内に4万人以上
現在、日本での性器ヘルペスの患者数は約7万2000人とされています。しかしHSVに感染している6割以上の人が、症状のない無自覚な状態です。HSV感染者を含めると、さらに多くの人が性器ヘルペス予備軍であると言えるでしょう。
本人が気づかないため診断や治療もされていない、潜在的な感染者が増えているのです。
性器ヘルペスに感染する原因や行為
性器ヘルペスに感染する原因や行為にはどんなものがあるのでしょうか?患者との性行為が主な原因ですが、性行為以外の接触でも感染する恐れがあります。
ヘルペスに感染する具体的な原因や行為
- 性器ヘルペス患者とのセックス
- 性器ヘルペス患者とのアナルセックス
- 性器ヘルペス、口唇ヘルペス患者とのオーラルセックス
- 口唇ヘルペスを触った手で性器などの粘膜に触れる
- ヘルペスウイルスがついたタオルや便座を使用する
性行為による感染が多いものの、性行為だけに限らず、ウイルスがついたタオルや便座などからも感染します。患部を触らない、手を洗う、肌に触れるものを共有しない、などの対策で予防できます。
性器ヘルペスが原因と考えられる症状
性器ヘルペスへの感染がきっかけとなる症状にはどんなものがあるのでしょうか?はじめて性器ヘルペスに感染すると、4日から10日前後で症状があらわれます。
ヘルペスに感染した具体的な症状
- 性器に軽いかゆみがある
- 性器に赤いブツブツができる
- 性器に強い痛みを感じる
- 性器が熱を持って腫れる
- 排尿時に痛みがある
- 38度以上の発熱が出る
- 脚のつけ根のリンパ節が腫れて痛む
- 唇や口のまわりにできものがある
性器ヘルペスが原因となってかかる病気や疾患
性器ヘルペスが引き金となってかかる病気、ヘルペスと併発しやすい疾患はあるのでしょうか?
新生児単純ヘルペスウイルス感染症
性器ヘルペス自体が不妊の原因となることはありませんが、妊婦の性器ヘルペスが新生児にうつることがあります。性器ヘルペスにかかった妊婦の産道を、新生児が通過する時に感染します。感染は稀ですが、致死率は高い病気です。
HIV感染症 / エイズ
HSV-2に感染していると、新たにHIV感染症にかかるリスクが約3倍も高くなります。HIV-1とHSV-2の重複感染は、深刻な合併症を起こす可能性が高まります。
ヘルペス脳炎
単純ヘルペス脳炎は重い急性脳炎です。
発症すると急な発熱や意識障害、けいれん発作が必ず起きます。幻覚や記憶障害、失語症(しつごしょう)などの言語障害もあらわれます。脳の側頭葉(そくとうよう)や大脳にウイルスが侵入することで発症します。
ほとんどはHSV-1によるものですが、免疫不全の患者(HIV感染者)では、HSV-2が原因となることの方が一般的です。治療を行わない場合は死亡することもあります。
無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)
HSV-2が原因となることが多い。脳の周囲の髄膜とくも膜下腔に感染して、髄膜炎を引き起こすことがあります。錯乱、発熱、けいれんなどから死亡することもある重大な合併症です。
性器ヘルペスを予防するには、ヘルペス患者との性行為を控えることはもちろん、肌に直接触れるものを共有しないなど、接触を避けることが大切です。
もし恋人やパートナーの性器、口、唇などに水ぶくれなどのヘルペスの症状が出ているときは、キスやセックスなどの性行為は控えましょう。症状がすでに出ている場合や、HSVへの感染が疑われる場合、早めに医療機関で検査や治療を受けましょう。感染を拡大させないためにも、早期発見・治療が重要です。
性器ヘルペスの原因まとめ
ヘルペスウイルスに初めて感染する、最も多い原因は性行為です。性器にできた病変部に触れることで、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に感染します。
ヘルペスウイルスは感染力が非常に強いウイルスです。感染者の口や陰部などの粘膜、皮膚にあらわれた湿疹、唾液や精液などの体液を通して感染します。なかには性行為だけに限らず、ウイルスがついたタオルや便座などから感染する例も報告されています。
病変部が目視できるのなら、患部を触らない、手を洗う、肌に触れるものを共有しない、などの対策で予防しましょう。