
性器ヘルペスの症状は初発と再発、男女で違う
性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)のうち1型(HSV-1)、または2型(HSV-2)の感染により、性器や性器の周辺がただれたり、水ぶくれが起きる性感染症です。
性器ヘルペスの最も厄介な特徴が、感染した本人も気づけない「ヘルペスウイルスの潜伏」です。ウイルスが潜伏していれば症状はあらわれないため、早期発見の妨げとなってしまいます。また、症状は治療によって緩和しても、身体の不調などをきっかけに、繰り返しあらわれてしまうのです。
この記事では性器ヘルペスの症状を、初めて出る症状や再発する症状、男女の症状の違いに分けて詳しく解説します。
性器ヘルペスの発症は3パターン
性器ヘルペスは、一度かかってしまうと完治しない性感染症です。投薬治療を行えば症状は一旦おさまるものの、身体の不調などによって何度も症状があらわれます。一度感染すると、通常なら年に1回から2回は症状が出ます。多い人では月に2回、3回と再発を繰り返します。
ヘルペスの症状が初めてあらわれることを「初発」、繰り返しあらわれることを「再発」と呼びます。特に、初発の場合は2種類に分けることができます。1つ目は、感染してすぐに症状があらわれる「初感染初発」です。2つ目は、感染してからすぐに症状が出ず、しばらく経ってから症状があらわれる「非初感染初発」です。
3つの発症パターン(初感染初発、非初感染初発、再発)ごとに、症状の度合い、病変が発症する身体の範囲、治療に要する期間をまとめました。
初感染初発 | 非初感染初発 | 再発 | |
---|---|---|---|
症状 | 重い | 軽い | 軽い |
発症範囲 | 広い | 狭い | 狭い |
治療期間 | 長い | 短い | 短い |
3つの発症パターンで、症状の重さや治療期間が異なります。症状の度合いが強く、病変が発症する身体の範囲が広くなるほど、治療に要する期間も長引きます。
ヘルペス発症のパターンの違いによって、服薬治療の用法や用量も異なります。服薬治療の場合、通常バルトレックス(バラシクロビル)が処方されます。
次に、性器ヘルペスの初発(初感染初発、非初感染初発)したとき、再発したときの症状を、男女ごとに詳しく見ていきましょう。
男性患者の性器ヘルペスの症状
初感染初発

初感染初発は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染した後、すぐに症状が出るパターンです。症状が突然あらわれるため、急性型ともいいます。最も重い症状が出ます。
外陰部や口のまわりに病変があらわれている患者と、性的な接触(性行為)を行うことで感染します。2日間から10日間くらいの潜伏期間の後、男性器を中心に病変があらわれます。
初めは男性器の表面にヒリヒリ感やむずかゆさなどを感じます。その後は徐々に、1ミリから2ミリくらいのかゆみを伴う赤いブツブツや水ぶくれができます。症状があらわれてから5日目くらいまでには水ぶくれが破れ、皮膚がただれたような状態(潰瘍)になります。7日目くらいには痛みが最も強くなり、38度以上の熱が出ることもあります。発熱中は太もものリンパ節に、腫れや痛みがあらわれます。
男性の症状の出る部位は、亀頭(男性器の先っぽ)や陰茎、亀頭を包む皮などです。太ももやお尻、肛門のまわり、肛門自体にあらわれることもあります。
非初感染初発

非初感染初発は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染しても、すぐには症状が出ないパターンです。誘発型ともいいます。
ヘルペスウイルスに感染しているものの、ウイルスは眠った状態なので症状はあらわれません。身体に潜伏しているHSVが、疲労やストレス、他の病気にかかったときなどを合図に暴れ出します(再活性化)。
初感染初発と比べると、症状のあらわれる範囲は狭く、治るまでの期間も短いことがほとんどです。
再発

再発は、初めて症状が出た後、一度は薬によって押さえ込んだウイルスが、再び身体にあらわれるパターンです。
再発も非初感染初発と同様、疲労やストレス、他の病気にかかったときなどに、ウイルスが再活性化します。
皮膚に出る症状は初めて感染したときによく似ています。亀頭や男性器、お尻、太ももなどに水ぶくれや潰瘍のような症状があらわれます。
初感染と違うのは、発熱やリンパ節の腫れといった重い症状につながることが少ない点です。全体の症状は比較的軽く、再発から治癒までの期間は1週間以内でおさまります。
女性患者の性器ヘルペスの症状
初感染初発

初感染初発は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染した後、すぐに症状が出るパターンです。症状が突然あらわれるため、急性型と呼ばれ、重症化する傾向があります。
性器や口のまわりに病変があらわれている患者と、性的な接触(性行為)を行なうことで感染します。2日間から10日間くらいの潜伏期間の後、女性器を中心に病変があらわれます。
女性器のまわり、大陰唇や小陰唇、膣口や肛門周辺に、1ミリから2ミリくらいのかゆみを伴った赤いブツブツや水ぶくれができます。徐々に水ぶくれがやぶれ、皮膚がただれたような状態(潰瘍)になります。38度以上の発熱、太もものリンパ節には腫れや痛みがあらわれます。
男性の病変が外陰部だけなのに対し、女性特有の症状として膀胱や子宮頸部といった体のなかまで影響が及びます。ヘルペスウイルスが髄膜にまで達し、髄膜炎を起こすこともあります。とても強い痛みを伴うため、尿が出なくなるほどです。症状が重い場合は、入院治療になることもあります。少しでも気になる症状が出た場合は、なるべく早めに病院で診てもらいましょう。
非初感染初発

非初感染初発は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染しても、すぐには症状が出ないパターンです。誘発型ともいいます。
ヘルペスウイルスに感染しているものの、ウイルスは眠っており、症状が身体にあらわれません。疲労やストレス、月経や性交、その他の刺激がきっかけとなって、潜伏していた単純ヘルペスウイルス2型が暴れ出します(再活性化)。
症状のあらわれる範囲や治るまでの期間は、初感染初発と比べると軽いことがほとんどです。
再発

再発は、初めて症状が出た後、一度は薬によって押さえ込んだウイルスが、再び身体にあらわれるパターンです。
再発も疲労やストレス、月経や性交、身体の免疫力が落ちたことがきっかけとなって、ウイルスが再活性化します。
症状のあらわれる部位は初感染したときによく似ています。大陰唇や小陰唇、膣口やお尻、太ももなどに、小さな水ぶくれや潰瘍のような症状がいくつかあらわれます。
初感染のときに比べると、発熱やリンパ節の腫れなどに繋がることも少なく、軽い症状でとどまります。治療期間も短縮され、抗ウイルス薬を服用しなくても、再発から治癒までトータルしても1週間以内でおさまります。
性器ヘルペスの 再発には予兆があります。感染者の多くが、なんとなく外陰部が変だな、という違和感やかゆみを覚えます。ほかにも神経の症状として、足がしびれるような痛みを感じて気がつくこともあります。
性器ヘルペスの症状まとめ
この記事では、性器ヘルペスの様々な症状をみてきました。
性器ヘルペスの発症には3つのパターンがあります。初感染初発、非初感染初発、再発です。症状の度合いや病変が発症する身体の範囲、治療に要する期間は、初感染初発が最も重症化します。非初感染初発や再発は、軽い症状で済むことがほとんどです。
ひとつ気をつけたいのは、「皮膚の水ぶくれやかぶれ、膀胱や子宮内部の炎症などの症状を引き起こす原因は、性器ヘルペスだけとは限らない」ということです。
性器ヘルペスと間違えやすい細菌感染症はいくつかあります。代表的なものが、カンジダ膣炎(真菌性膣炎)、膀胱炎の2つです。どちらも性器ヘルペスとよく似た症状があります。
自身の判断だけで「この症状はきっと性器ヘルペスだ」と決めつけてしまわずに、泌尿器科や婦人科などで必ず性感染症の診断を受けるようにしましょう。