
尖圭コンジローマの基礎知識
尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる性感染症です。感染すると陰部や口内にイボができ、放置すると重症化してしまいます。また再発率が高いことも特徴で、厄介な性病といえます。
そんな尖圭コンジローマの原因とは?どうやって治療するの?などなど、尖圭コンジローマに関する疑問を一緒に解消していきましょう。
尖圭コンジローマの原因は?どうして感染するの?
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで引き起こされます。ヒトパピローマウイルスとは、尖圭コンジローマの他に陰茎がん、子宮頸がんの原因ともなるウイルスです。
ヒトパピローマウイルスはその遺伝子型により、がんの原因となる可能性のある「ハイリスク型」とそうでない「ローリスク型」に分かれます。またさらに皮膚に感染するものと粘膜に感染するものとにも分類されます。
尖圭コンジローマは主に、「HPV6」や「HPV11」などの粘膜に感染するタイプのローリスク型ウイルスが原因となって発症します。
では、一体どのようなことが原因でヒトパピローマウイルスに感染し、尖圭コンジローマを発症させてしまうのでしょうか?
主に性行為によって感染する
尖圭コンジローマは、主に性交によって感染します。性交とはセックス(膣性交)だけではなく、アナルセックス、オーラルセックスも含まれます。ヒトパピローマウイルスは性行為の際に、陰部や口内などの粘膜、皮膚にある小さな傷を介して感染するのです。ちなみに、口内にイボができてしまっている場合は、キスだけでも感染する恐れがあります。
以上のことから分かるように、尖圭コンジローマは皮膚や粘膜の性的な接触によって感染します。特に感染力が強いのは、感染部位にイボができている場合です。しかし無症状であっても、潜伏しているウイルスが相手に感染する可能性もあるので注意しましょう。
性行為以外の感染ルートは?
性交以外で尖圭コンジローマに感染する原因として、産道感染が挙げられます。
産道感染とは、産道内に感染するヒトパピローマウイルスが、分娩の際、赤ちゃんに移行してしまうことを指します。赤ちゃんがヒトパピローマウイルスに感染すると、のどにイボができて呼吸を妨げる「若年性再発性呼吸乳頭腫症」を発症させる恐れがあります。赤ちゃんに多大な負担をかけないためにも、尖圭コンジローマは出産前に必ず治療しましょう。
ちなみに、銭湯やプールといった水中を介して感染が成立することはほとんどありません。
原因まとめ
ここまでお話ししてきた尖圭コンジローマの原因についてまとめてみましょう。
- 尖圭コンジローマは、膣性交、アナルセックス、オーラルセックスによって感染する
- 口内にイボがある場合はキスでも感染する
- 女性の場合、尖圭コンジローマを治療しないまま妊娠・出産すると、赤ちゃんに産道感染させてしまう
- お風呂やプールといった水中で感染することはない
繰り返しますが、尖圭コンジローマの主な感染経路は性交です。膣性交だけでなく、アナルセックスやオーラルセックスでも感染してしまうため、性行為を行う際は注意が必要です。
尖圭コンジローマの症状は?
ここからは、尖圭コンジローマの症状について詳しく見ていきましょう。
ウイルスに感染してから尖圭コンジローマの症状があらわれるまでの潜伏期間は、平均で2.8ヵ月です。しかし実際にイボがあらわれるタイミングは、患者によってまちまちです。早ければ数週間で症状があらわれますが、遅ければ8か月もの間、症状が出ないこともあります。無症状の期間が長ければ長いほど、パートナーに感染させる恐れも高まります。早期発見のためにも、尖圭コンジローマの症状をしっかり把握しておきましょう。
主な症状であるイボとその特徴
尖圭コンジローマの主な症状はイボです。ウイルスに感染後、感染した部位(陰部・口内の粘膜)に、複数のイボが密集して発生します。
以下は、尖圭コンジローマのイボに関する特徴です。
- イボの大きさは数ミリから数センチと様々
- 色は薄ピンクや赤、白、黒、褐色など
- イボの表面にはざらつきがある
- イボは乳頭状の形をしており、ニワトリのトサカやカリフラワーにもたとえられる
基本的にイボができても痛みやかゆみはありません。さらにイボ以外に目立った症状があらわれないため、発見が遅れがちな性病でもあります。
また、性別によってイボのできる部位も異なります。男女別に見ていきましょう。
男性のイボができるところ
男性の場合、イボは主に陰茎にあらわれます。イボのできる詳しい部位は以下の通りです。
- 亀頭
- 冠状溝(亀頭と陰茎の間にあるみぞ)
- 尿道付近
- 包皮(内側、外側)
- 陰嚢(いんのう)
- 肛門付近(または肛門内)
- 口内
症状が進行し、イボが亀頭を覆うように発生してしまうと、排尿や射精が困難になります。そうなる前に、イボの発生を確認したら、ただちに病院で治療を受けるようにしてください。
女性のイボができるところ
女性の場合、イボは主に膣周辺にあらわれます。イボのできる詳しい部位は以下の通りです。
- 大陰唇
- 小陰唇
- 膣(入口、または内部)
- 子宮頚部
- 尿道付近
- 肛門付近
- 口内
女性は男性に比べ、症状に気づきにくいとされています。というのも、イボのできた場所が膣の外部や肛門でも、普段から自分の目で見る機会は少ないからです。もしも不安のある行為をしてしまった場合は、イボができていないかセルフチェックを欠かさないようにしましょう。仮にイボができてしまっても、病院へ行くのが早ければ、それだけ治療期間も短く済みます。
尖圭コンジローマの検査方法は?
尖圭コンジローマは、視診と触診によって診断されます。尖圭コンジローマのイボは特徴的なため、医師も一目見て「尖圭コンジローマだ」と判断が下せる場合がほとんどです。そのため、特別な検査法はこれといってありません。しかし、視診・触診だけで判断を下すことが難しいくらいイボが小さい場合は、組織検査や遺伝子検査が行われます。どちらもイボを切り取り、そのイボを検査してウイルスに感染していないか調べる検査法です。とはいえ、尖圭コンジローマの診断において、このような検査がおこなわれることはほとんどありません。
病院の何科へかかるべき?
尖圭コンジローマと思われるイボがあらわれたら、すぐに医師に診てもらいましょう。その場合、男女ともに性病科を受診することがベターですが、なかなか行くのは恥ずかしいという方も多いですよね。性病科以外なら、男性は泌尿器科、女性は産婦人科へ行くとよいでしょう。他には皮膚科でも診察が可能なので、ぜひ自分の行きやすい科で受診してください。
尖圭コンジローマの治療法
尖圭コンジローマを治すには、薬物療法と外科療法の2通りの治療法があります。それぞれどのような治療法なのかを紹介します。
薬物療法
薬物療法では、ベセルナクリームという塗り薬を使って治療していきます。ベセルナクリームは、イボに塗ることで尖圭コンジローマへの免疫力を高める効果があり、結果としてウイルスの増加を抑えてくれます。
ベセルナクリームの塗り方と注意点
ベセルナクリームは週に3日、1日1回、就寝前に塗ります。塗る時は、周辺の皮膚にクリームをつけないよう注意し、イボにだけ薄く塗ってすりこんでください。塗り終わったらきちんと手を洗い、クリームを塗った部分はテープなどで覆わずそのままにしておきましょう。起床後(薬の塗布から6~10時間後)は、塗布したクリームを石鹸できれいに洗い流してください。
ベセルナクリームは、毎日連続で塗ったり、健康な皮膚に塗ったりしてしまうと重い皮膚障害を引き起こすことがあります。そのため、クリームの塗布は必ず1日おきにしてください。またクリームを塗る際も、イボ周辺の健康な皮膚につけないよう、気を付けましょう。
外科療法
外科療法には、主に4種類の手術法があります。それぞれどのような手術なのかを紹介します。
- 凍結療法
マイナス196度の液体窒素でイボを凍らせる手術法。4つの手術法の中で最も中心となる方法。
- 電気焼灼
電気メスでイボを焼く手術法。皮膚を焼くため、術後は傷が残りがちだが、痛みが少ないのが特徴。
- レーザー蒸散
炭酸ガスレーザーでイボを除去する手術法。周辺の皮膚も焼くため、再発防止効果がある。
- 外科的切除
専用の器具でイボを切除する手術法。他の手術法に比べ、痛みや出血を伴いやすい。
4つの中からどの手術法をもちいるかは、イボの状態によって医師が判断します。
治療にかかる金額は
尖圭コンジローマの治療費は、診察費がおよそ1,000~5,000円、手術費が3,000~7,000円、薬代が3,000円程度です。尖圭コンジローマの治療には保険が適用されるため、治療費の総額はおよそ15,000円ほどでしょう。保険を適用しないと治療費は倍以上かかってしまうので、注意してください。
尖圭コンジローマを予防するには
尖圭コンジローマの予防法として、コンドームが有効です。尖圭コンジローマは主に性交によって感染するため、アナルセックスやオーラルセックスを含む性行為を行う際は、必ずコンドームを使用してください。
また、尖圭コンジローマと診断されたら、医師から許可が出るまでは一切の性行為を控えましょう。処方された薬を塗るうちに、イボが小さくなった、またはなくなったからといって、自分で「完治した」と判断することは危険です。尖圭コンジローマは再発率が高く、一度治っても3か月以内に25%の患者が再発しているのです。イボが小さくなって治ったように見えても、ウイルスがまだ残っている可能性は十分にあります。パートナーに感染させないためにも、医師に完治を認められるまでは性行為を行わないようにしてください。
さらに感染リスクを少しでも減らすためには、不特定多数の人との性交は避けたほうがよいでしょう。
予防法まとめ
最後に、尖圭コンジローマを予防するための方法をおさらいしてみましょう。
- 性交(アナルセックス、オーラルセックス含む)の際には必ずコンドームを使う
- 尖圭コンジローマと診断されて以降の性行為は控える
- 不特定多数の人との行為は控える
尖圭コンジローマなどの性病は、安全な性生活を心掛けることが最もよい予防法といえます。仮に陰部や口内にイボがあらわれてしまった場合は、できるだけパートナーと一緒に診察を受けてください。
尖圭コンジローマは、適切な治療を根気強く行えば必ず完治する病気です。病気の発見が早ければ早いほど、治療期間も短く済みます。尖圭コンジローマと思われる症状があらわれたら、なるべくすぐに病院へ行きましょう。