公開日
2017/04/05
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尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる性感染症です。感染部位には、ニワトリのトサカのようなイボが多発します。

尖圭コンジローマは高い確率で再発してしまう、とても厄介な病気です。そんな尖圭コンジローマの原因とは一体なんでしょうか?ここでは、尖圭コンジローマの原因となるウイルスや、主な感染経路について説明します。

尖圭コンジローマの原因、ヒトパピローマウイルスとは?

尖圭コンジローマの原因である、ヒトパピローマウイルス(HPV)

現在では150以上の種類(遺伝子型)があるウイルスです。”ヒト”パピローマという名前の通り、人間にしか感染しないウイルスで、”パピローマ”とは、皮膚に生じる腫瘍を指します。

ヒトパピローマウイルスは、「良性型」と「悪性型」に分類されますが、尖圭コンジローマの原因となるウイルスは「良性型」のヒトパピローマウイルスです。

尖圭コンジローマの原因であるヒトパピローマウイルスウイルス

ちなみに、「良性型」のヒトパピローマウイルスは尖圭コンジローマを、「悪性型」のヒトパピローマウイルスは、女性なら子宮頸がん、男性なら陰茎がんを引き起こすことがあります。

尖圭コンジローマを引き起こすヒトパピローマウイルスには、粘膜型である「HPV6」や「HPV11」など、計12個の遺伝子型があります。

尖圭コンジローマの患者数は?

性器カンジダ症や性器ヘルペスに比べ、やや知名度の低い尖圭コンジローマ。実際の患者数はどれくらいなのでしょうか。

厚生労働省による性感染症報告数の年次推移を見ると、尖圭コンジローマはあらゆる性病の中で、4番目に患者数が多いことがわかります。

尖圭コンジローマはあらゆる性病の中で4番目に患者数が多い

他の性病に比べると、尖圭コンジローマの割合はさほど高くないことが分かります。

しかし、ヒトパピローマウイルスは、性交渉を持ったことのある女性の約60~80%が一度は感染するとされているウイルスです。誰にでも感染してしまう可能性が高いため、気を付けなければなりません。

以下は、尖圭コンジローマの年間患者数(男女別)のグラフです。

尖圭コンジローマの年間患者数(男女別)のグラフ

統計が取られている10年の間、男女ともに平成21年度に患者数がやや減少したものの、平成24年度辺りからまた少しずつ増加しています。患者数が極端に増減することはなく、ほぼ横ばいの状態が続いていることがわかります。

尖圭コンジローマの主な感染経路は?

ここからは、なぜ尖圭コンジローマに感染するのか、その原因についてお話しします。

尖圭コンジローマは、主に性行為が原因で感染します。ヒトパピローマウイルスは、ヒトの粘膜や皮膚にある小さな傷から入り込み、尖圭コンジローマを発症させます。そのため、膣性交以外のオーラルセックス、アナルセックスでも感染します。

感染から発症まで平均2.8か月

また、尖圭コンジローマは感染してから症状が出るまで、平均して2.8ヵ月もの期間があります。この2.8ヵ月という潜伏期間はあくまで平均です。実際には、早ければ数週間で症状があらわれる場合もあります。しかし、遅ければ感染してから8ヵ月もの間、なんの症状もあらわれないケースもあるのです。潜伏期間が数ヶ月にもわたるので、多くの人が感染したことに気づかず性交の回数を重ねてしまいます。結果、無自覚のまま自分が次の感染源となり、パートナーにまで感染させてしまうのです。

尖圭コンジローマが感染してから症状の出るまでの平均は2.8ヵ月です

ちなみに、口腔内にイボができてしまっている場合は、キスでも感染する可能性が高いです。しかし、イボのできた場所が性器周辺のみで、口・のどに病変が見られない場合は、キスで感染する可能性は低くなります。尖圭コンジローマは、病変に皮膚や粘膜が直接触れることで感染が広まります。

参考:日本性感染症学会 治療ガイドライン2011 / 日本性感染症学会:PDF

これまでお話しした主な感染経路についてまとめてみましょう。

尖圭コンジローマの感染経路
尖圭コンジローマは、主に皮膚や粘膜の擦れる性交によって感染する
オーラルセックス、アナルセックスでも感染する
口・のどに病変がある場合は、キスだけでも感染する恐れがある

イボが出て初めて感染を疑う人がほとんどです。気になる症状があらわれたら、なるべくパートナーと一緒にすぐ病院で検査を受けましょう。

感染リスクが高い人とは?

上記で述べたように、尖圭コンジローマの主な感染経路は性交です。そのため、必然的に不特定多数のパートナーと性交の機会を多く持つ人は、尖圭コンジローマに感染するリスクが高くなります。また、感染してから症状が出るまで最長で8ヵ月ほどかかるため、性交をより多く行ってきた人ほど、感染経路の特定は難しくなります。

他にも、ヒトパピローマウイルスは皮膚や粘膜の小さな傷から侵入するため、病変部位に皮膚炎などを患わっていると、より感染しやすくなります。

性行為以外でも感染する?

主に性行為によって感染する尖圭コンジローマですが、それ以外に感染する可能性はあるのでしょうか?順番に見ていきましょう。

母子感染の可能性も

妊娠している女性が尖圭コンジローマに感染していた場合、お腹の赤ちゃんに感染させてしまう恐れがあります。とはいっても、胎盤を通して感染するわけではありません。一般的には、妊娠している女性が尖圭コンジローマであっても、胎児に影響を及ぼすことはありません。しかし、尖圭コンジローマの病変が女性の膣にあった場合、赤ちゃんが生まれてくる時にその膣(産道)を通ることで感染してしまうのです。これを産道感染といいます。

赤ちゃんが感染した場合、のどにイボができて呼吸を妨げる「若年性再発性呼吸乳頭腫症」を発症する恐れがあります。イボの場所や大きさによっては、気道が狭くなり、気管切開手術が必要になります。赤ちゃんの切開手術にはただでさえリスクが伴うため、コンジローマは出産前に必ず治療しておきましょう。

お風呂やプールでも感染する?

基本的に、尖圭コンジローマは水中では感染しません。しかし、肛門付近にイボを持った人が銭湯のイスや公衆トイレの便座を使用した場合、そこを介して感染する可能性はあります。銭湯やプール、サウナといった不特定多数の人と素肌で接触する可能性のある場所では、十分に注意しましょう。銭湯の桶やイスは感染リスクを下げるためにも、一度きれいに流してから使用したほうが安全です。

再発率の高い尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは、手術や薬剤療法などで完治する病気ですが、同時に再発率の高い病気でもあります。感染部位のイボを直接治療しても、ヒトパピローマウイルスはその周辺の皮膚に潜伏感染している場合もあります。つまり、治療中にも皮膚や粘膜の見えないところでは感染が広まっている恐れがあるのです。こうしたケースが非常に多いため、尖圭コンジローマは治療後、少なくとも3ヵ月は病院で経過を診てもらうことが推奨されています。というのも、尖圭コンジローマを治療後、3ヵ月以内に約25%の患者がまた再発しているのです。

参考:日本性感染症学会 治療ガイドライン2011

したがって、治療のために通院する必要がなくなっても、最低3ヵ月は感染の危険がある行為はひかえましょう。治療後から短くて3ヵ月、長くて半年以内に再発しなかった場合は、完治したと考えてよいでしょう。

まとめ

ヒトパピローマウイルスが原因となって引き起こされる、尖圭コンジローマ。

膣性交やオーラルセックス、アナルセックスといった性的接触が主な感染経路です。尖圭コンジローマは潜伏期間が数週間から8ヵ月ほどで、無症状の期間がとても長い病気です。そのためなかなか感染したことに気づけず、自分でも知らない間にパートナーに感染させてしまうケースも多いです。

性交以外では母子感染、また尖圭コンジローマを患わっている人との接触感染の可能性が挙げられます。銭湯やプールといった施設で他人と共有する用具を使う際は、十分に注意してください。