
性器ヘルペスは病院で検査・診断を受けて再発を予防する
性器ヘルペスの自覚症状が出た場合、どの病院へ行けばいいのでしょうか。性器ヘルペスは一度かかると完治しない、厄介な性感染症です。病院ではどのような検査で診断をくだし、治療がおこなわれるのでしょうか。性器ヘルペスの診断方法とあわせて、初感染予防と再発予防の方法も紹介します。
性器ヘルペスは病院へ行けば治る?
性器ヘルペスにかかってしまったら、現在の医療技術では完治はしません。たとえ自然に性器ヘルペスの症状が治まったとしても、ウイルスは体に残っているので、何度も再発を繰り返すのです。初めて性器ヘルペスにかかると、ひどいかゆみや痛み、水ぶくれといった重い症状が出ます。症状を早く緩和するためにも、専門の病院へ行きましょう。

何科の病院へ行けばいい?
性器ヘルペスが発症したとき、何科の病院で検査や診察を受ければ良いのでしょうか。性器ヘルペスにかかったら、以下のような病院へ行きましょう。
- 皮膚科
- 性病科
- 泌尿器科
- 婦人科・産婦人科
性器ヘルペスの原因は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)と単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)です。HSV-1、HSV-2の専門は皮膚科なので、性器ヘルペスの症状が出たら皮膚科を受診しましょう。皮膚科以外でも、上記の病院であれば性感染症として診断、治療できます。出産予定の女性であれば、産婦人科を受診するといいでしょう。病院以外で性感染症の検査をできるのは保健所ですが、性器ヘルペスに関しては保健所での検査はおこなっていないようです。
性器以外の症状
単純ヘルペスウイルスに感染すると、顔まわりにヘルペスが出る場合もあります。代表的な症状は口唇ヘルペスです。ヘルペスの症状が出たら、基本的に皮膚科を受診すれば問題ありません。近くに皮膚科がなく、受診が難しい場合、各部位の専門の病院へ行きましょう。鼻や耳にヘルペスができたら耳鼻科、目の周りなら眼科で受診できます。
病院の診察ではどんなことをする?
性器ヘルペスの診断の多くは、簡単な問診と視診によりおこなわれます。性器ヘルペスは典型的な患部の症状から診断できるので、多くは診察のあとに検査をせず、すぐに治療という流れになります。

問診で聞かれること
問診では、現在あらわれている症状について質問されます。症状がいつ頃出はじめたのか、単純ヘルペスウイルスに感染した心当たりはあるか、痛みやかゆみの程度はどれくらいかを確認します。女性であれば、月経(生理)がどのような状態かも確認されるでしょう。
視診で確認すること
視診では、医師が患部を確認します。よく出る症状は水ぶくれや赤いブツブツで、視診によって判断できます。性器ヘルペスの症状が確認されると、治療薬が出されます。詳しい検査をおこなわなくても症状がわかりやすいこと、また治療薬にも重大な副作用がないことから、ほとんどの場合は検査せずに診断されます。
診断の問題点
単純ヘルペスウイルスの検査が難しいために、できる限り 問診と視診によって性器ヘルペスを診断しなければなりません。そのため、症状が似ている病気との誤診が問題です。もちろん、経験のある医師は性器ヘルペスを正しく診断できます。しかし経験の浅い医師は、性器ヘルペスをほかの病気と診断してしまう場合があるのです。そういった間違いをなくし、性器ヘルペスをしっかり診断するために、詳しい検査が必要です。
病院の費用は?
性器ヘルペスの診察料は保険適用で1,500円程度、治療薬の処方は3,000円程度です。保険適用でなければ、診察料や治療費を含めて2万円から4万円程度はかかります。性器ヘルペスの症状があれば保険適用になります。費用は病院ごとにかなり差があるので、事前に確認しておきましょう。
ウイルス検査した方がいい?どんな検査?
性器ヘルペスは典型的な病変があるため、検査せずに問診や視診で診断できます。加えて検査方法が難しいことや、時間と費用がかかるという問題があり、あまり検査がおこなわれません。
検査をおこなう場合、ヘルペスに似た病気と判別するためや、単純ヘルペスウイルスの型を判別するという目的があります。単純ヘルペスウイルスの型を判別することは、再発治療に役立ちます。上記したように、一度単純ヘルペスウイルスに感染すると完治することがないため、常に再発を意識しなければなりません。再発の確率は単純ヘルペスウイルスの型によっても違い、HSV-2はHSV-1よりも再発しやすいのです。
妊娠したら検査しましょう
妊娠中の女性がすでに性器ヘルペスに感染していると、母子感染する恐れがあります。出産のタイミングで性器ヘルペスを発症している場合、新生児が産道を通るときに感染してしまうのです。母子感染から新生児ヘルペスが発症すると、最悪の場合は死に至ります。母子感染を避けるため、単純ヘルペスウイルスに感染しているかどうか、事前に検査しましょう。検査で単純ヘルペスウイルスの感染がわかれば、治療薬でウイルスを抑える、もしくは帝王切開で出産をする、といった対処ができます。

詳しい検査方法
日本で一般的におこなわれている性器ヘルペスの検査は、大きく分けるとウイルス抗原検査とウイルス抗体検査の2つです。これらの検査は性器ヘルペス以外にも、口唇ヘルペスやヘルペス脳炎といった、単純ヘルペスウイルスによる疾患にも用いられます。
ウイルス抗原検査
ウイルス抗原検査では、患部の細胞または分泌物から単純ヘルペスウイルスを見つけます。ウイルス抗原検査の中でも、最も詳しく検査できるのは分離培養法です。分離培養法では確実にウイルスを見つけることができ、かつHSV-1とHSV-2の型を判別できます。しかしこの検査は、時間がかかる上に保険適用でないことが難点です。そのため、一般的にはあまりおこなわれていません。病院でよくおこなわれる検査は、1時間ほどで結果が出る蛍光抗体法です。蛍光抗体法は保険適用で、HSV-1とHSV-2の型を判別することができます。以下は、蛍光抗体法で検出されたウイルスの画像です。
蛍光抗体法は費用も時間も抑えられますが、ウイルスの証明が難しい検査です。はっきりとした皮膚症状が出ていなければ、ウイルスが見つけにくくなってしまいます。もっと簡単にできるウイルス抗原検査もありますが、検査の精度はあまり高くありません。
ウイルス抗体検査
ウイルス抗体検査では、症状がなくても簡単に血液で検査ができます。ただし、単純ヘルペスウイルスの感染歴しかわかりません。ウイルスに感染したことがあれば、抗体はすでにできています。そのため抗体を見つけても、いま出ている症状が単純ヘルペスウイルスによるものかどうかまでは断定できないのです。初感染の場合では、感染してから陽性反応が出るまで時間がかかります。性器ヘルペスにかかってから、7日から10日ほど経過しなければ抗体ができないのです。初感染の発症からすぐで症状がひどくても、早急な検査・診断ができません。加えて、保険適用のウイルス抗体検査では、HSV‐1とHSV-2を判別できないのです。そのため性器ヘルペスは、ウイルス抗体検査によっての診断が難しいのです。
感染予防と再発予防
性器ヘルペスの予防法で意識すべきは以下の2点です。
- 初感染の予防→まずウイルスから身を守る
- 再発の予防→眠っているウイルスが活性化しないよう抑制する
予防法を知るために、ウイルスが感染、再発するメカニズムを図で詳しく見てみましょう。
初感染の場合、体外から入ってきたウイルスが増殖して発症します。再発の場合、すでに体内で眠っていたウイルスが目覚め、再び増殖することで発症します。感染、再発しやすいタイミングと、その予防法を併せて見ていきましょう。
初感染しないために
性器ヘルペスにかからないためには、発症しているパートナーとのセックスを避けましょう。性器ヘルペスだけでなく、口唇ヘルペスを発症している相手とのオーラルセックスによっても性器に感染します。単純ヘルペスウイルスは性器や口の周りだけでなく全身に広がるので、コンドームだけで感染を予防することはなかなかできません。単純ヘルペスウイルスは症状が出ているときが一番感染力が強いので、治療中のセックスは避けましょう。
再発しやすいタイミング
多くの人は、自分でも気づかないうちに単純ヘルペスウイルスに感染しています。単純ヘルペスウイルスはとても身近で、完治しないといえども、発症しなければ特に害もありません。しかし、体調が悪いときや、生活リズムが乱れているときに、眠っていたウイルスが活性化してしまいます。女性なら月経(生理)のタイミングでも、性器ヘルペスが再発しやすくなります。免疫力が下がっていると、普段は抑えることができている単純ヘルペスウイルスが発症するのです。一度性器ヘルペスになると、症状が治まっても単純ヘルペスウイルスは体の中にいます。初感染に比べると再発は症状が軽いですが、発症してしまわないためには規則正しい生活を心がけましょう。
免疫力を高める食事
免疫力を高めるためには、バランスのとれた食事が必要です。特に単純ヘルペスウイルスの抑制に効果があるとされているのは「リジン」という必須アミノ酸です。
リジンはウイルス抗体を作るために必要となります。主にリジンが含まれているのは大豆製品や魚介類などです。ヘルペスの再発予防として、積極的に取ると良いでしょう。
再発抑制療法
性器ヘルペスに関しては再発抑制のための治療があります。症状が出てから治療するのではなく、治療薬を飲み続けて単純ヘルペスウイルスを抑制する方法です。再発抑制療法は、年に6回以上再発を繰り返す患者に対しておこなわれます。治療薬としては、アシクロビルもしくはバラシクロビルを使用します。保険適用で処方してもらえるのはバラシクロビルです。
「バラシクロビル」で再発抑制
バラシクロビルは1日1回、500㎎を1年間服用します。この方法で患者の60%から70%が再発の抑制に成功しています。しかし、再発があまりに多い場合、治療薬の服用中でも再発する場合があるので、その場合は治療薬を1日2回に増やします。
再発抑制療法の費用は1ヶ月約6,000円、1年で約7万円です。決して安い金額ではありませんが、厄介な再発が抑えられ、再発したとしても軽い症状で済みます。あまりに再発が多い場合は再発抑制療法を検討してみましょう。
まとめ
性器ヘルペスは完治することのない病気です。しかし、治療をすれば症状は治まります。放っておかず、病院で診断を受けることが大切です。症状がひどい、または再発を何度も繰り返してしまうといった場合、治療薬で単純ヘルペスウイルスを抑えこみましょう。