
梅毒の原因と感染経路、何したら感染?梅毒が原因の症状は?
梅毒とは、性感染症のひとつです。時代劇などに登場することから、昔の病気と思われがちな梅毒ですが、現代でも多くの人が感染し発症しており、近年では患者数が増加傾向にあります。
梅毒の原因は?どんなことをしたら感染する?
梅毒に感染する原因や、どんな人からどんな時に移ってしまうのかを詳しく見ていきましょう。
梅毒の原因となる梅毒トレポネーマとは?
梅毒トレポネーマとは病原体の一種であり、梅毒の原因となる細菌です。
この梅毒トレポネーマが体内に侵入すると、およそ3週間ほどで感染した部位にしこりや腫瘍が現れます。また梅毒は、一度感染したらもう二度と感染しなくなるという「終生免疫」がつかない病気です。そのため、梅毒に感染して治療し、一度は回復しても、予防をおこたればまた感染する恐れがあるのです。
冒頭にも述べたように、近年、梅毒に感染する人が次第に増加していっています。
下記のグラフは、東京都における梅毒感染者の年別報告数推移を表したものです。2008年から2012年までは、梅毒感染者数が400人未満と比較的少ない状態が保たれていました。しかし、2013年頃から患者数の増加が目立ち始め、2016年には過去最大となる1700人弱もの人が梅毒に感染してしまいした。
このグラフを見て分かるように、梅毒は2011年ころから患者数が右肩上がりに急増している病気です。それでは、梅毒に感染する原因について詳しくご紹介しましょう。
梅毒に感染する原因や行為は?
梅毒は、主に性交によって感染します。
梅毒の原因である梅毒トレポネーマは感染者の皮膚や粘膜に潜み、性交を介して相手に感染します。この場合の性交とは、避妊具を使わない膣性交に限りません。他にも、オーラルセックスやアナルセックスなどで感染者の性器やのど、直腸を通じて感染してしまいます。また性交を行わずとも、梅毒トレポネーマが口の中に潜んでいる場合は、キスだけでも感染する恐れがあります。
母が原因で子へ感染することも
こうした皮膚や粘膜の直接的な接触を通した感染の他に、母子感染というものもあります。母子感染とは、梅毒にかかっている女性が妊娠した際、その胎盤を通して胎児に梅毒が伝染してしまうというものです。こうした胎児の梅毒を「先天性梅毒」と呼びます。母子感染は、妊娠した女性が梅毒に気づかなかった、あるいは治療しなかった場合にのみ起こります。しかし、最近では妊娠初期の段階で、梅毒に罹患していないかきちんを検査をすることが義務付けられています。そのため、母子感染が起こる可能性はほぼありません。
輸血が原因で感染することも
また他にも梅毒の感染経路として、血液感染というルートも挙げられます。血液感染は、感染者からの血液や臓器の提供、または感染者との傷口のふれあいが原因として起きます。しかし血液や臓器の提供をするには、他人に輸血・移植しても問題がないか、医療機関が検査を行います。また感染者との傷口のふれあいも、日常生活でそう起こるものではないでしょう。これらの理由から、血液感染もほぼ起こることはありません。
梅毒に感染する原因として、性交、母子感染、血液感染についてお話ししましたが、やはり最も多い原因は性交であるといえます。近年になって再び梅毒が流行している背景には、昔と比べ、不特定多数の異性と性交渉を持つ機会が多くなったことが挙げられるでしょう。
お風呂やトイレ、プールで感染することは?
梅毒に感染する主な原因についてお話ししましたが、他のルートで感染することはないのでしょうか。お風呂や銭湯、プールやトイレの便座など、不特定多数の他人と間接的に皮膚や粘膜を共有する場では、もしかしたら感染するのでは?と不安になることでしょう。
性行為以外の感染は考えにくい
結論からいうと、そういった場で梅毒に感染する可能性はほぼないといってもよいでしょう。というのも、梅毒の原因である梅毒トレポネーマは、乾燥や温度変化に弱いという特徴があるからです。梅毒トレポネーマは人の体液内という低酸素状態でしか生きられず、ひとたび体外へ出てしまうと、途端に感染力を失ってしまうのです。そのため、お風呂や便座、プールなどで、皮膚や粘膜が間接的に接触する程度では、感染する可能性はほぼありません。また、感染者と同じタオルを使ったり、同じ食器で食べまわし・飲みまわしをしても感染することはそうそうありません。
しかし、こういった経路での感染が完全にないとは言い切れません。もし感染していることが分かっているのなら、あらかじめ銭湯やプールの利用はひかえたり、タオルや食器は分けて使ったりなどして気を付けましょう。
梅毒は症状が出たり消えたりを繰り返す
梅毒は、感染してからどれほど時間が経っているかを目安に、それぞれ第1期、第2期、第3期、第4期に分けられます。第1期は感染してから3週間~3ヵ月、第2期は3ヵ月~3年を指し、これらの時期を早期梅毒と呼びます。ちなみに第3期は感染から3年~10年、第4期は10年以降を指し、これらの期間を晩期梅毒と呼ばれます。
病期 | 感染機会からの時間 |
|
---|---|---|
第1期 | 感染後3週間~3ヵ月 | 早期梅毒 |
第2期 | 感染後3ヵ月~3年 | |
第3期 | 感染後3年~10年 | 晩期梅毒 |
第4期 | 感染後10年~ |
症状のある「顕性梅毒」と症状のない「潜伏梅毒」
第1期では症状として、感染した部位(性器、肛門、口など)に小豆程度の大きさのしこりがあらわれます。それに加え、太ももの付け根あたりのリンパ節に腫れが生じもします。しかしこれらのしこりや腫れに痛みはなく、こうした症状は治療せず放置してもおよそ3週間ほどで治まります。多くの人は症状が治まったことで治ったのだとつい勘違いしてしまいますが、実はこれは梅毒の潜伏期に移行しただけなのです。
第1期に適切な治療を行わず放置すると、梅毒は第2期に移行します。第2期に入ると、痛みのない紅斑が身体全体にあらわれたり、粘膜に腫瘍が生じたりします。また、これらの症状も放置すると1ヵ月ほどで治まります。
梅毒は、こうして症状のある期間「顕性梅毒」と、症状が治まる期間「潜伏梅毒」を繰り返し、徐々に重篤化していくのが特徴です。
人に移しやすい時期は?
梅毒を人に移しやすい時期は、第1期から第2期への移行期間、つまり潜伏梅毒の時です。潜伏梅毒の期間中は、自覚症状が一切あらわれません。さらに第1期に起きていたしこりやリンパの腫れといった症状も一時的に緩和されるため、「治った」と勘違いしてしまう人が多いのです。そのため、本当は完治していないのに性交を行ってしまうケースが非常に多く、感染者本人も気づかないうちに、さらに感染が拡大していくのです。
ちなみに、第2期から第3期への移行期間中も潜伏梅毒の状態です。こうした無自覚の感染を防ぐためにも、梅毒と思われる症状があらわれたら、ただちに病院で検査を受けるようにしましょう。
梅毒が原因で起こる「神経梅毒」にも注意
梅毒に感染してしまった場合、それと併発して起こる可能性のある「神経梅毒」にも注意してください。神経梅毒とは、梅毒トレポネーマが中枢神経に感染した際に起こる病気です。梅毒に感染してから数年~数十年経過したのちに起こる病気で、梅毒の第1期、第2期時に治療をおこたると発病するおそれがあります。
細かい症状は以下の通りです。
- 頭痛
- 発熱
- 身体への電撃痛
- 歩行困難
- 記憶障害
- 排尿障害
- 瞳孔異常
こうした身体の諸症状に加え、さらには水頭症や脳梗塞といった重篤な病気を引き起こすきっかけとなってしまうこともあります。神経梅毒を防ぐためにも、梅毒が疑われる症状があらわれた際には、早急に治療を受けるようにしましょう。