
梅毒の判定は2種類の血液検査で診断する
梅毒に感染した場合、何科へ行けばよいのでしょう。性病の検査となると、何をするか分からず不安な人も多いですよね。
どんな検査をする?かかる費用は?など、梅毒の検査について詳しくお話ししていきます。
梅毒検査が可能になるのはいつごろ?
一般的に、細菌やウイルスに感染してから、検査でそれらが検出されるようになるまでの期間をウインドウ・ピリオドと呼びます。このウインドウ・ピリオドの時期に検査を受けても、正常な結果が出ず、細菌やウイルスが検出されない場合があります。では、梅毒のウインドウ・ピリオドはどれほどの期間なのでしょうか。

梅毒に感染してから検査が可能になるまでの期間は、およそ4週間です。そのため、梅毒に感染したおそれのある行為から4週間以内に検査を受けても、正しい検査結果は得られないでしょう。ちなみに、梅毒の症状が出始めるのは、感染してから約3週間ほどです。感染から症状が出るまでの期間は潜伏期間であり、ウインドウ・ピリオドとは異なるので注意してください。
検査を受けられる場所は?
梅毒の検査は、全国の病院、または保健所で受けることができます。病院と保健所では、それぞれ検査にかかる費用や日時などが異なります。詳しく見てみましょう。
病院 | 保健所 | |
---|---|---|
メリット | ・いつでも検査が可能 ・検査の信頼性が高い |
・無料、匿名で検査が可能 |
デメリット | ・場合によっては保険が利かないため、高額になる場合も | ・1~2週間に1日しかやっていないところも ・1日の定員が規定されている場合も |
以上のように、病院と保健所ではそれぞれ違いがあります。高額になってしまう場合もありますが、基本的には早期発見のために病院で検査を受けたほうが安心です。しかし、どうしても匿名で検査を受けたい場合は、保健所へ行ってみてもよいでしょう。性病の検査を受け付けている全国の保健所は、HIV検査相談マップ(厚労省) から探すことができます。
病院の何科へ行けばいい?
梅毒の検査を受けに病院へ行くとき、何科にかかればよいのでしょうか?

一般的には、男性なら泌尿器科、女性なら産婦人科とされています。確かに、性器に症状があらわれた場合はその選択で間違いありません。また、「症状は出ていないけれど不安だから検査を受けたい」という場合も、それぞれの科で検査を受けられます。
ただし、症状が出ていないときに検査を受けても保険が適用されない場合がほとんどです。あらかじめ注意しましょう。
ちなみに、皮膚に梅毒と思われる症状が出た場合は皮膚科へ、のどに症状が出た場合は内科へ行けば検査が受けられます。このように、症状の出る部位によって受診する科が変わることもあります。繰り返しになりますが、「とりあえず梅毒の検査を受けたい」という場合には、男性は泌尿器科、女性は産婦人科へ行くとよいでしょう。
梅毒血清反応検査
梅毒血清反応検査とは、梅毒に感染したことによって体内で作られる抗体を検出する検査です。梅毒の検査はこのほかに、梅毒の原因そのものである梅毒トレポネーマを直接採取する方法もあります。しかし、これには感染者の患部が必要であり、梅毒に感染しているかまだ分からない状態で検査を行う場合には不適切な方法です。したがって、梅毒検査で一般的に行われる検査法が、先ほどの梅毒血清反応検査なのです。

梅毒血清反応検査には、STS法とTP抗原法の2種類があります。どちらも採血による検査ですが、それぞれがどういったものなのか、順にご紹介します。
STS法
梅毒に感染すると、梅毒トレポネーマが体内に侵入し、細胞を破壊します。すると、破壊された細胞の中からカルジオリピンと呼ばれるリン脂質があらわれます。このカルジオリピンに対する抗体をカルジオリピン抗体と呼び、STS法ではこのカルジオリピン抗体があるかを検査します。つまりSTS法では、梅毒に感染していれば必ず作られるカルジオリピン抗体が見つかるかによって梅毒であるかを判断します。
STS法のメリット
- カルジオリピン抗体は感染後2~4週間で血中にあらわれるため、本来のウインドウ・ピリオドを待たずして検査が可能。早期発見につながる。
- カルジオリピン抗体の値が治療に応じて低下していくため、治療効果の目安となる。完治の判定に使われることも。
STS法のデメリット
- 直接、梅毒トレポネーマに対する抗体を検査しているわけではないため、梅毒以外の病気で陽性反応が出ることもある。
TP抗原法
梅毒に感染し、梅毒トレポネーマが体内に侵入すると、それに対するTP抗体という抗体が作られます。TP抗原法とは、梅毒の病原菌そのものに対するTP抗体を見つける検査方法です。
TP抗原法のメリット
- 上記の通り、梅毒そのものに対する抗体を調べる方法のため、非常に正確な検査結果が得られる。
TP抗原法のデメリット
- TP抗体が作られるのは梅毒に感染後3ヵ月以降のため、検査が可能になる時期がSTS法より遅い。早期発見ができない。
- TP抗体は、一生陰性化しない。そのため一度陽性反応が出ると、たとえ梅毒が完治してもずっと陽性のままとなってしまう。
STS法とTP抗原法をあわせて検査が行われる
上記の通り、STS法とTP抗原法では、それぞれ検出する抗体が異なります。また、どちらにもメリット・デメリットが存在するため、梅毒の検査ではこの2つの方法を組み合わせた検査が行われます。STS法とTP抗原法での結果が、どちらも陽性、どちらも陰性、またはどちらかが陽性・陰性かで、下される診断が異なります。
STS法 | TP抗原法 | 診断結果 |
---|---|---|
陽性 | 陽性 | 梅毒感染(早期や晩期などの病期問わず) |
陽性 | 陰性 | 初期梅毒感染(擬陽性の可能性もあり) |
陰性 | 陽性 | 梅毒治療後の抗体保持者 |
陰性 | 陰性 | 梅毒ではない |
このように、梅毒の検査ではそれぞれの抗体への血清反応を調べ、その結果に基づいた診断が下されます。
検査にかかる費用は?
梅毒の検査費用は、病院によって大きく異なります。というのも、梅毒の検査に保険の適用が認められるか認められないかは、各病院によって変わるからです。

梅毒検査にかかる費用は、2,000円から10,000円ほどと、ふり幅が大きいです。保険が適用される場合であれば、費用は2,000円から4,000円ほど。保険が適用されなければ、費用は5,000円から10,000円である場合が多いです。病院へ検査に行く場合は、保険の適用が利くかどうかをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
自宅で梅毒検査ができるキットも
感染の不安はあるけれど、それでもやはり病院へは行きづらい…という人は多くいることでしょう。今は病院へ行かなくとも、自宅で簡単に梅毒の検査ができるキットも販売されています。

やり方はとても簡単で、検査器具から出てくる小さな針を指に刺し、そこから出た血をろ紙に押し付けて採取するだけです。あとはそれをキットに同封されている返信用の封筒に入れ、各検査所へ送ります。
結果は郵送やインターネットから確認することでき、費用も3,000円から5,000円程度と、場合によっては病院で検査を受けるより安価で済みます。この方法なら誰に知られることもありませんし、簡単に検査が行えます。しかし、便利に思える梅毒の検査キットにも、下記のようなデメリットがあります。
- 一度でも梅毒に感染したことがある場合は使用できない
- 陽性反応が出た場合、また改めて病院へ行かなければならず、費用がかさむ
- 間違えて他の性病検査キットを購入してしまうと正確な結果が得られない
こういった理由もあるため、やはり病院で検査を受けることが一番といえます。しかし、どうしても「病院へ行くのが怖い」「検査を誰にも知られたくない」といった場合には、検査キットを使ってみてもよいでしょう。