公開日
2017/02/21
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ざっくりまとめると
梅毒の治療にはペニシリン!早期の治療なら最長8週間で完治。
ペニシリンは神経梅毒にも有効。妊婦や新生児も安心して使える。
梅毒の治療費は病院によって変動。自由診療なら匿名で受けられる!

梅毒は、病院で経過を見つつ、長期にわたって治療しなければならない病気です。そのため、梅毒の治療薬は市販されていません。ここでは、梅毒に感染した際、病院から処方される薬とその使い方についてご紹介します。

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梅毒は薬で時間をかけて治療する

梅毒は、日本で初めて流行した江戸時代には不治の病とされていました。しかし、戦後に「ペニシリン」という抗生物質が使用されるようになってから、梅毒での死亡率は著しく下がりました。

梅毒は、短い期間だけ薬を服用すれば治るといった病気ではありません。医師による経過観察のもと、長い治療期間を経て完治に向かう病気です。また、病期(梅毒の進行具合)によって薬の投与期間も異なります。

それぞれの病期に対応する治療薬の投与期間は、以下の通りです。

梅毒の病期と治療薬の投与期間
梅毒の病期 治療薬の投与期間
第1期(感染後3週間~3ヵ月) 2週間~4週間
第2期(感染後3ヵ月~3年) 4週間~8週間
第3期以降(感染後3年~) 8週間~12週間

上記の表から分かるように、梅毒は病期が進むにつれ治療が長期化します。そのため、早い段階で治療を始めることが大切です。

梅毒は、適切な治療を行えば完治する病気です。ここからは、梅毒の治療薬の効果や種類、飲み方について解説します。

梅毒の治療にはペニシリンが有効!

梅毒の治療に優先的に選ばれる薬がペニシリンです。細菌の体を覆っている細胞壁の合成を阻害することで、菌の増殖を抑える働きがあります。

ペニシリンは、世界で初めて発見された抗生物質であり、梅毒の治療に非常に役立つ薬です。特に、第1期、第2期の梅毒に。「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016」では、梅毒の治療について、以下のように記載されています。

梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペ ニシリンを第一に選択すべきである。

人によっては、ペニシリンにアレルギーがあり、薬が使えない場合があります。ペニシリンにアレルギーのある人が梅毒の治療する際は、塩酸ミノサイクリン(ミノマイシン)を1日2回、100㎎服用することになっています。

海外ではペニシリン以外の薬が使われることも

海外では、ペニシリンの他に、アジスロマイシンという抗生物質が使われる場合もあります。日本では「ジスロマック」という商品名で販売されており、性器クラミジア感染症や淋病の治療にも使われます。

代表的な製品はサワシリンとパセトシン

梅毒に使われるペニシリン系の薬剤で、代表的な製品として挙げられるのは、サワシリンパセトシンです。アモキシシリンという有効成分が含まれています。

アステラス製薬株式会社のサワシリン錠250(アモキシシリン水和物)アステラス製薬株式会社のサワシリン錠250の形状

サワシリンは、咽頭炎や気管支炎など、風邪症状が悪化した際に使われることが多いですが、梅毒の病原菌である「梅毒トレポネーマ」の駆除にも非常に有効です。

パセトシンは、様々な感染症の治療に効果があり、ペニシリン系薬剤の中で最も多く使われています。

サワシリンとパセトシンは、1回1錠、1日に3回から4回服用します。1回の服用で、4時間から6時間にわたって効果が持続します。

また、サワシリンには、ノバモックスというジェネリック医薬品があります。

シプラ(Cipla)のノバモックス250(アモキシシリン水和物)シプラ(Cipla)のノバモックス250の形状
出典:ノバモックス250 / あんしん通販薬局

用量はサワシリンと同様、1回1錠、1日に3回から4回服用します。ノバモックスは、淋病の治療にも有効です。国内では認可されていないため、病院では処方されませんが、個人輸入を扱っている通販サイトで入手できます。

神経梅毒には点滴や注射が使われる

梅毒の第3期に発症することが多い「神経梅毒」。この神経梅毒も、通常の梅毒と同じようにペニシリン系の薬剤を用いて治療します。

具体的には、ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)が6回に分けて投与されます。点滴の他にも注射で治療を行う場合もあります。治療期間は、症状の重さによりますが、平均して約10日から2週間程度です。

ペニシリンは妊婦でも安心して使える

妊娠初期の女性は、梅毒にかかっていないかを確かめるため、必ず検査を受けます。この検査で梅毒に感染していることが分かった場合、早急に治療に移ります。

「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016」では、アセチルスピラマイシンを1日200㎎、6回に分けて投与するとされています。

他の治療法としては、やはりペニシリン系の抗生物質を多量に投与するといったものがあります。妊婦が摂取した成分は、胎盤を通して胎児に届くため、母体と胎児を同時に治療することが可能です。

赤ちゃんが感染したときもペニシリンが有効

梅毒を患わっている女性から生まれた乳幼児は、梅毒にかかっている可能性があります。「先天梅毒」といって、生まれながらにして梅毒に感染している状態です。

先述したように、妊娠初期の女性は必ず梅毒の検査受けるため、基本的には先天梅毒の乳幼児が生まれることはありません。しかし中には、検査を受けたにも関わらず、先天梅毒を持って生まれる子どももいます。

以下の表は、国立感染症研究所が公開している、梅毒患者の報告数に関する資料です。

梅毒患者の報告数

表を見ると、2008年から2014年の間に、平均しておよそ5件の先天梅毒が報告されています。

先天梅毒の乳幼児の治療にも、ペニシリンが有効です。神経梅毒と同様、ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)が使われます。

自由診療は治療費が高くなる代わりに匿名で受けられる

梅毒の治療にかかる費用は、保険適用の有無によって異なります。保険適用で治療を受ければ、費用は3割負担で済みます。一方、保険が適用されず、自由診療となる場合、費用は全額負担しなければいけません。

保険適用のほうが費用を抑えられますが、自由に診療にもメリットがあります。それは「匿名で検査・診察が受けられること」です。

自由診療の場合、診察や薬を受け取る際に保険証を提示する必要がありません。保険適用で治療を受けた場合、医療費通知が郵送されるため、家族や職場の人に知られてしまう可能性があります。しかし、自由診療なら医療費通知は作成されないため、診察を受けたことを周囲に知られる可能性が大幅に下がります

保険診療と自由診療の費用は以下の通りです。

保険診療 自由診療
検査代 2,000~4,000円 8,000~10,000円
薬代 3,000円 10,000円

薬は4週間分が処方されます。保険が適用されるかどうかは、病院やクリニックによって異なります。また、自由診療を扱っている病院やクリニックでは、金額にばらつきがあります。自由診療の費用は、病院側が自由に決められるためです。これらのことから、上の金額は目安と考えてください。

保険適用でもプライバシーに配慮している病院やクリニックもあります。梅毒の治療を受ける際は、医療機関のホームページを検索して、保険適用の有無やプライバシーの配慮について調べてみるとよいでしょう。

保健所なら検査費がかからない!

保健所では、梅毒の検査を無料で受けられます

病院で梅毒の検査を受ける場合、保険が適用されるのは症状が出ている場合に限ります。保健所で検査を受ける場合、そのような制約はありません。そのため、「症状は出てないけれど、感染していないか確かめたい」という人は、保健所で検査を受けるのがおすすめです。

保健所で梅毒の検査を受ける場合、HIVの検査も同時に受ける必要があります。また、梅毒は感染から1ヶ月以上経っていないと、検査を受けても菌が検出されません。検査を受ける場合は、感染が疑われる機会から1ヶ月以上経ってからにしましょう。

まとめ

梅毒は、長期的に治療を受ければ完治します。治療にはペニシリンと呼ばれる種類の抗生物質が使われます。サワシリン、パセトシン、ノバモックスが代表的です。神経梅毒の場合、点滴や注射が用いられます。妊婦や乳児が感染した場合もペニシリンが有効です。

梅毒の治療費は保険診療と自由診療、どちらを受けるかによって変わります。保険診療は3割負担となります。自由診療は全額負担ですが、病院を受診したことを周囲に知られにくいのがメリットです。また、保健所では無料で検査を受けられます。

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