
HAART療法(はーつ・りょうほう)
HAART療法とは、数種類の抗HIV薬を利用する、HIV感染症の治療法のことです。HAART療法が開発されて実施が進んだことで、エイズの発症や死亡者の減少に成功しました。
HAART療法では、「薬の飲み忘れ」を無くすことが、治療の成功と失敗の鍵を握ります。適切に実施すれば、HIVに感染していても、健康なひとと同じように生活できるのです。
この記事では、HAART療法を実施するうえで重要な、目標設定や服薬率について解説。さらには、抗HIV薬の種類と組み合わせ、怖い副作用についても紹介します。
「HAART療法ってどんな治療法なの?」という疑問を解消したうえで、HAART療法の基本知識を押さえましょう。
HAART療法は治療計画がキーポイント

HAART療法によるHIV治療は、治療をはじめたら一生涯とも言われるくらい、長い治療期間を要します。もし体内からHIVウイルスを完全に排除しようとすると、平均73年かかる計算になるほどです。現実には、治療をはじめその日から、生涯に渡ってずっと薬を飲み続けるのです。長期戦を乗り切るためには、他の疾患の治療とは異なった方法をとらなければなりません。長期治療の計画や目標、方針の決定が不可欠なのです。一般的なHIV治療では、医師と患者の間で、5つの目標・原則が設定されます。
- HAART療法の目標5つ
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- 3種類以上の薬剤を投与する(HAART)こと
- 治療目標は血中ウイルス量を検出限界以下に抑え続けること
- 免疫機能の回復と維持に重点を置くこと
- HAARTにより免疫機能が回復しても、治療を中止しないこと
- 治療だけの生活にならないよう、生活の質を高めること
HIV感染症は、HIVウイルスが白血球のリンパ球に感染して、人の免疫力をどんどん破壊していく疾患です。からだの免疫力が低下することで、健康なときには抑えられていた病原性の弱い微生物やウイルスが暴走します。HIV感染症は、大きく3つの病期(急性感染期、無症候期、AIDS期)に分けられます。AIDS期には、日和見疾患にかかる危険が生じるのです。これらを抑えるのがHAART療法の目標です。詳しくみていきましょう。
原則として3種類の薬剤以上を投与する
HAART療法とは、抗HIV薬3~4剤を組み合わせて併用する治療法です。2つ以下だと薬に耐性がついてしまい、効かなくなってしまうからです。
治療目標は血中ウイルス量を検出限界以下に抑え続ける
血中ウイルス量(HIV RNA量)とは、感染したHIVの増殖の度合いです。HIVがどの程度の速さで進行しているかの指標ともいえます。血中ウイルス量が増えると、CD4陽性リンパ球という免疫機能を破壊します。免疫機能が働かなければ、HIVウイルスが体内でどんどん増えます。結果、AIDS発症へと繋がっていきます。HAART療法では、この血中ウイルス量を検出できないレベルまで抑え続けることを目標としています。
免疫機能の回復と維持に重点を置く
からだの免疫がちゃんと機能しているのかを測る数値が、CD4陽性リンパ球数です。簡単に言えば、HIVによって破壊される免疫機能の残った数がわかります。数値がわかれば、その時点でのHIV感染症の程度が把握できるのです。
健康なひとのCD4陽性リンパ球数は、700~1,300/µLです。HIVに感染したひとは、200/µL未満まで下がり、日和見感染のリスクが高まります。何も対処しなければ、CD4陽性リンパ球数は下がり続けます。AIDSや免疫機能の低下によるさまざまな病気を発症させ、最終的には死に至る場合もあるのです。HAART療法では、CD4リンパ球数を健康な状態に近づけることに重点を置きます。
HAART療法で免疫機能が回復しても治療を中止しない
HAART療法を続ければ、血中ウイルス量(HIV RNA量)やCD4陽性リンパ球数は、徐々に安定します。数値の上でも回復に向かうのです。検査数値の回復と、体調の改善は比例するので、健康な状態とほとんど変わらなくなります。
「もう薬を飲まなくていいのではないか?」と思うかもしれません。しかし、自己判断で服薬を中止してはいけません。HAART療法を中止すると、薬で抑えていたHIVウイルスが活動を再開するからです。また、服薬を一度やめるだけで、同じ薬が二度は効きにくくなります(薬物耐性)。薬物耐性については、後ほど詳しく説明します。
一度HAART療法をはじめたら、ウイルスの再活性化と薬物耐性を避けるために、治療を続けなくてはならないのです。
治療だけの生活にならないように生活の質を高める
HAART療法は、一日一回でも薬を飲み忘れてしまえば、治療の失敗につながる可能性があります。とは言うものの、日常生活が服薬治療だけに縛られてはいけません。生きることの楽しさを感じ、生活の質を高めること(クオリティ・オブ・ライフ)も目標としています。
なぜなら、生活の質が上がれば、それだけ生きることにも前向きになります。生きることに前向きになれば、それが服薬の規則を守る意欲にもつながるからです。長期にわたる大変な治療生活だからこそ、そのなかで喜びを感じられるような生活を送れるよう、目標の一つに掲げています。
以上のように、5つの目標/原則のもと治療の計画や目標、方針の決定し、HAART療法は実行されます。次からは、具体的な治療についてみていきましょう。
HAART療法では複数の抗HIV薬を組み合わせる

HAART療法は、抗HIV薬を3~4剤を組み合わせる治療法です。抗HIV薬の種類と選び方のポイント、またウイルスが薬に耐性を持ってしまう、薬物耐性について詳しく説明します。また、HAART療法を開始する前に、事前に医師と相談する「服薬率」についてまとめました。
5種類の抗HIV薬から選択する
抗HIV薬を選ぶポイントは、「効果が高い」「副作用が少ない」「飲み忘れをゼロにする薬の組み合わせ」を選ぶことです。抗HIV薬の分類は大きく分けて5つです。
- 5種類の抗HIV薬
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- 核酸系逆転写酵素阻害剤(8種類)
- 非核酸系逆転写酵素阻害剤(4種類)
- プロテアーゼ阻害剤(8種類)
- インテグラーゼ阻害剤(3種類)
- 侵入阻害薬(1種類)
HAART療法はこのなかから、3~4剤を組み合わせて行なう治療法です。メインとなるHIVを抑制する効果が高い薬剤を「キードラッグ」と呼び、サブとなる薬剤を「バックボーン」と呼びます。5種類のなかから、キードラッグを1種、バックボーンを2~3種組み合わせるのです。抗HIV薬を効果的に組み合わせれば、3カ月から6カ月ほどの期間で、HIVウイルス自体は検出されないレベルまで減少します。
患者に適した薬剤の選定基準
キードラッグとバックボーンをどれにするかは、患者ごとに異なります。以下のリストは、患者に適した薬剤を選ぶ基準です。
- HIV感染者が持つ、ほかの病気や症状(心臓病や妊娠など)
- 抗HIV薬の副作用
- ほかに処方されている薬と、抗HIV薬との相互作用
- 薬剤耐性検査の結果
- 服薬の利便性(2種類の抗HIV薬を1つの錠剤に組み合わせるなど)
- 抗HIV薬の費用
- 食事との関係
- 錠剤数
- 薬の大きさ
HAART療法の天敵は薬物耐性

HAART療法を実施するにあたり、切っても切り離せないものが薬物耐性です。薬物耐性とは、細菌やウイルスが薬に対して抵抗力を持つようになり、薬が効かなくなることを指します。ウイルスに薬物耐性を持たせないことが、HAART療法にとって最も大切なことといえます。
HIVウイルスは体内で増殖するときに、突如として自身の形を変えます。抗HIV薬を服用中にHIVウイルスが変異する(機能的耐性)と、薬が効かなくなって、血中ウイルス量が増え続けます。一度効かなくなった薬は効力を発揮せず、HIVウイルスの増殖を防げません。
HARRT療法の開始から6カ月程度でウイルスが抑制できなかった場合、ウイルスは薬剤へ抵抗を持ってしまいます(行動性耐性)。HIVウイルスに効果がない薬を与え続けると、6カ月を目処に抵抗力を持つからです。
また、HAART療法の開始前にウイルス量自体が多い場合、治療は失敗する可能性があります。抗ウイルス効果が薬剤の血中濃度が関係していて、他の薬との相互作用や食事の関係で血中濃度が下がった場合(代謝性耐性)も、失敗へと繋がります。
HIVウイルスの耐性はひとからひとへ感染する
HIVウイルスの薬物耐性は人から人へと広がります。 既に何らかの薬物耐性がついたHIV感染者が感染元であると、その薬物耐性ごと感染します。言い換えると、感染元の人が効かなかった薬は、感染先の人にも効きません。
このように、薬物耐性の危険はHAARTには付きものです。薬物耐性ができてしまうと治療の幅が狭くなるばかりか、他の人への感染ではその耐性まで引き継いでしまいます。薬物耐性の原因についてみていきましょう。
薬物耐性の一番の原因は服薬ルールを守らないこと
薬物耐性の一番の原因は、服薬ルールを守らないことです。臨床現場で、HAART療法が失敗する、最も多い例が薬の飲み忘れです。新薬は今も開発され続け、より良い薬ができています。患者自身がHAART療法に対して、積極的に参加すれば、HAARTは十分な効果を発揮できます。
HAART開始前に相談したいこと
HAART療法の服薬率を100%に近づける鍵が、自分の生活習慣と服薬規則があっている薬を選ぶことです。効果的で服用しやすい薬を選ぶためにも、事前に下記のことについて医師に伝えておきましょう。
治療を開始する時点で、すでに飲んでいる薬があれば伝えましょう。市販薬やサプリメントも含みます。抗HIV薬との相互作用が起こり、薬の効果が下がったり、副作用が出やすくなったりします。
次に、服薬が難しくなる問題や習慣があれば、事前に医師に伝えておくとよいでしょう。例えば、アルコールをよく飲む人の場合、薬の服用には注意が必要かもしれません。また、仕事の都合上、運転などで眠くなると危ないから薬が飲めないといった事情があれば、それも事前にきちんと相談しましょう。医師が一緒に問題を解決してくれます。
そして、自宅や職場でのスケジュールを医師に教えておくことも大切です。服薬に関するルールは日常生活に合わせて作られます。服薬しやすい時間帯や環境などを考慮して薬を選んでくれます。
他にも気になる点があれば、些細なことでもちゃんと相談するべきです。医師とコミュニケーションをしっかり取って、服薬率100%を目指しましょう。
HARRT療法は早めに開始する

抗HIV治療ガイドラインでは、HARRT療法はなるべく早いタイミングで開始するべきとされています。HIV感染に関連する疾病の発症(日和見感染症や合併症など)や死亡率を下げるためです。もちろん、患者個々の症例をみながら、治療の開始時期を遅らせることもゼロではありません。ただし、基本は早期治療と覚えておきましょう。
早期開始で生存率が上昇、健常者並みに回復する
抗HIV治療ガイドラインでは、CD4リンパ球数の数値に関わらず、すべてのHIV感染者にHAARTを早く開始するよう推奨しています。治療の開始を早くすべきか遅くすべきかという問題については、HARRTの運用が開始されてから、さまざまな議論がありました。
1997年にHARRT療法が開始されたときは、以下の理由から早く開始すべきとしていました。
- ウイルスの増殖を早期に抑制できる
- 免疫機能を保持できる
- 無症候期間を延ばすことができる
- 他人へのHIV感染の予防になる
2003年以降は一転して、以下の理由で、なるべく遅くに開始すべきとしました。
- 服薬の大変さが患者のQOLを低下させる
- 患者の費用負担が大きい
- 副作用と長期的に付き合わなければならない
- 薬剤耐性ができて将来使える抗HIV薬の選択範囲が限られてくる

しかし、2010年の研究結果によって、論争に終止符が打たれました。それは、CD4Tリンパ球数の数値が高い状態で治療を開始すると生存率があがるということです。CD4陽性Tリンパ球数が一定の数値以下から開始すれば、死亡率が高まるという研究結果も出たのです。
というのも、CD4陽性Tリンパ球数が減少するまでHARRTを延期すると、HIV患者には別のリスクが出てきます。AIDSに定義されている疾患と、心臓病などAIDSではない重大な疾患の両方の危険に晒されるからです。
また、CD4Tリンパ球数の回復の程度は、HARRT開始時の患者のCD4Tリンパ球数の数と直接関係することが研究で明らかになりました。CD4Tリンパ球数の数値が高い状態で治療を開始すると、健康なひとと同じくらいまで数値が回復したのです。また、HIV患者の平均寿命も伸びることが分かってきました。以後、再び早期に治療を開始する方向に論調が変わりました。
HARRT療法を導入する判断基準
HARRT療法を開始する時期の判断は、すでにAIDSを発症しているのか、まだ発症していないのかによります。AIDSを発症している場合は、速やかに治療を開始します。発症していない場合は、CD4陽性Tリンパ球数の数値を参考に、治療の開始を判断します。
HIVの進行 | CD4陽性Tリンパ球数 | 治療時期の判断 |
---|---|---|
AIDSを発症している | - | ただちに治療を開始 |
AIDSを発症していない | 500/μLより多い | 治療を開始しても良い |
500/μLより少ない | 治療を開始 |
HAART療法は、効果を確認しながら治療を進めていくため、患者に適した薬の組み合わせが分かっているわけではありません。万人に確定的な治療法があるわけではないのです。薬剤を何種類も試せば、自ずと治療費は高額になります。そのため早くから治療をはじめることが困難な患者もいます。治療を早くはじめた方が、当然ながら回復も早まります。しかし、そのぶん服薬とも長く付き合うことになります。
また、HAART療法は、まだまだ発展途上の治療法です。新たな研究結果によって、治療の開始時期を再び遅くすべきという方針の転換もあり得ます。一度はじめたら非常に長い期間を要するため、将来のことも含め、医師と相談することが大切です。
HARRT療法の費用は高額
HARRT療法の高額な医療費を減額できる方法が2つあります。ひとつは「障害者手帳」、もうひとつが「高額医療制度」です。
障害者手帳を取得する
HAARTの治療費は、1カ月で15万円から20万円ほどと、非常に高額です。抗HIV治療を行うには、生涯でおよそ7000万円かかるとも言います。
現状では、障害者手帳がなければ、治療の継続はどうやっても困難です。障害者等級が3級もしくは4級であると、医療費負担が1割になります。障害者等級1級もしくは2級の重度な心身障害者医療に関しては、所得や各自治体により受けられる助成が変わります。認定基準や等級は、「HIVの影響で日常生活がどのくらい困難か」で異なってきます。詳しい内容を参照先で確認してみてください。
高額医療制度を利用する
HAART療法による医療費を削減するもうひとつ方法が、高額療養費制度です。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。上限額は年齢や所得によって変わるので、詳しくは役所や病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう。
治療費の総計が7000万円と聞くと、払えるわけがないと思ってしまうような高額な医療費です。しかし、国がしっかりとしたサポート体制を整えています。まずは各自治体に問い合わせてみましょう。
HAARTと副作用は背中合わせでもメリットが勝る

抗HIV治療薬に限らず、薬には副作用がつきものです。特にHAART療法は副作用と密接に関わっています。そもそも抗HIV治療薬には、副作用の症状が強く出るものがあります。複数の薬剤を組み合わせるため、薬剤同士による副作用も避けられません。
しかし、抗HIV治療薬を使うメリットは、副作用のデメリットを考慮しても、はるかに大きいのです。また、抗HIV薬は新薬の開発が日々行われています。新しい薬になればなるほど副作用も少ないのです。将来的には、薬の選択肢が増えれば増えるほど、副作用が回避できるようになるでしょう。
発症時期で副作用は異なる
抗HIV薬は、他の様々な医療用医薬品と比較しても、副作用の発症状況が多岐にわたります。副作用の症状は、単に軽い重いだけの度合いではありません。短期間でおさまる症状、長期間にわたって続く症状など、様々です。
また、厄介なことに突発的に副作用が発生するケースもあります。抗HIV薬を飲みはじめてから、数か月間から数年間にわたって何もなかったとします。しかし、ある日突然副作用を発症することもあるのです。HAART療法特有の副作用には、数種類の抗HIV薬同士がそれぞれ別々の副作用を起こすこともあげられます。
それでは、具体的にどんな症状があるのか見ていきましょう。
HAART療法の開始直後にあらわれる副作用
抗HIV薬を飲みはじめた直後にあらわれやすい副作用です。代表的なものは以下の通りです。
- 疲労感
- 吐き気、嘔吐
- 不眠症
- 下痢
- 頭痛、熱
- 筋肉痛
- めまい
発疹や腫れは一般的な抗HIV薬の副作用です。これらは短期でおさまる軽い症状です。
ただし、顔、目、唇、喉、舌が腫れた場合は直ちに医師の診察を受けましょう。生命の危険にも及ぶ副作用とされています。稀にスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)という、薬に対して過度なアレルギー反応を起こしている可能性があります。SJSの症状は、皮膚の痛み、かゆみ、舌と顔の腫れなどです。また、 口や鼻、目の周りの皮膚や粘膜に、水疱が発生する場合もあります。SJSは生命すら奪いかねない危険な症状です。もしも服薬をしていてこういった症状が出たならば、すぐに医師の診察を受けましょう。
HAART療法の実施過程であらわれる副作用
抗HIV薬の中には、薬を飲みはじめてから数カ月後から数年後にあらわれて、長く続く副作用もあります。代表的なものは以下の通りです。
- 腎不全を含む腎疾患
- 肝障害
- 心臓病
- 糖尿病
- 高脂血症
- 脂肪異栄養症
- 骨粗鬆症
- 乳酸アシドーシス
- 不眠、めまい、うつ、自殺思考など、神経系や精神医学的効果
長期的な副作用とは、薬の副作用として別の疾患が発生するケースです。
例えば、核酸系逆転写酵素阻害剤や非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤を服用し続けていると肝障害や糖尿病、脂質異常症や高脂血症などの成人病を引き起こす可能性があります。高脂血症になると心臓病のリスクも上がります。核酸系逆転写酵素阻害剤の副作用には乳酸アシドーシス、腎障害、骨粗鬆症などの重い病気も含まれます。
HAART療法のまとめ
HAART療法は、抗HIV薬を複数用いる、強力な対HIV療法です。しかし、HAART療法をもってしても、HIVウイルスを完全に排除することは困難です。HIVウイルスを抑え続けるためには、生涯にわたる計画的な服薬が必要になります。
HAART療法の成功には、治療計画が肝となります。複数の薬剤を用いることはもちろん、根治ではなく抑制に重きを置くこと。患者自身の免疫機能の回復と維持を目指すこと。長期の治療を継続しながらも、それだけの生活にならないよう、生活の質を高めることも目標です。
HAART療法の特徴は、何と言っても「複数の薬剤を組み合わせる」ことです。3種類から4種類の薬剤を組み合わせて行なう治療法なので、効果的な薬の組み合わせを探ることに重点が置かれます。ほかにも治療の続けやすさ、耐性を避ける飲み合わせなど、抗HIV薬のチョイスには、細心の注意を払います。
HIVにかかっていても、HARRT療法を早く開始すればするほど、健康なひとと同じくらいの免疫力が取り戻せます。AIDSの発症リスクを下げられるのです。薬の飲み方をしっかりと守りさえすれば、HIV患者でも健常者とほぼ変わらない生活が送れます。
HIVの治療には副作用がつきものですが、HAART療法も例に漏れません。抗HIV薬自体の副作用だけでなく、組み合わせによる副作用は避けて通れない道です。
HAART療法を計画的かつ安全に行うためには、医師やソーシャルワーカーとの連携は必要不可欠です。治療中の副作用の悩みはもちろん、高額な医療費の悩みなど、ひとりで悩まずにまずは相談してみましょう。
参考文献・参考サイト
性病の用語集「HAART療法」は、以下のサイトや資料を参考に作成しました。