公開日
2018/01/19
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「C型肝炎」という病名は聞いたことがあっても、「どんな病気かはよく知らない」という人が多いのではないでしょうか?

C型肝炎は、21世紀の国民病ともいわれる肝臓の病気です。C型肝炎になると、長期にわたって続く肝臓の炎症によって細胞が壊れます。将来は、肝癌の原因になる危険な病気です。

このページでは、C型肝炎の原因と感染経路、そして症状を紹介します。また、C型肝炎になってしまったときにも備え、検査や治療法、そして医療費を助成する制度についても知っておきましょう。

C型肝炎は21世紀の国民病と呼ばれるほど感染者が多い

C型肝炎はC型肝炎ウイルスが引き起こす肝臓の病気です

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)が引き起こす肝臓の病気です。HCVに感染したまま放置すると、肝硬変や肝癌を発症します。日本では150万人ほどがHCVに感染していると見られており、21世紀の国民病と呼ばれるほど感染者数が多い疾患です。

HCVに感染することによって、肝臓が炎症を起こします。体からHCVが排除されず、肝臓のなかにすみつくことで、炎症が半年以上も続くのです。これをC型慢性肝炎といいます。慢性肝炎の状態が続くと、徐々に肝臓の細胞自体が壊されていきます。細胞が破壊されて肝臓が硬くなった状態を肝硬変といいます。肝硬変から症状がさらに悪化すると、結果的に肝癌を発症させるのです。

C型肝炎ウイルスが感染すると肝がんに悪化する可能性がある

C型肝炎は肝癌のスタートラインともいうべき病気です。

日本国内には約150万人のHCV感染者がいると考えられています。このうち100万人(70%)の患者は、C型慢性肝炎を発症すると言われています。さらに、C型慢性肝炎を発症させた患者のうち40万人(40%)は、その後20年を経て肝硬変へと進行するのです。さらに肝硬変を発症させた患者のうち、7%(年率)の患者が肝癌を発症させています。HCVに感染した150万人のうち、3万人ほどの患者が肝癌まで悪化して死亡しているのです。

C型肝炎ウイルスは血液を介して感染する

C型肝炎ウイルスは血液を介して感染する

C型肝炎の原因であるHCVは、感染者の血液を介して感染します。以下のリストにある特徴に当てはまれば、HCVに感染している可能性があります。

  • 1992年以前に輸血を受けた方
  • 1994年以前に大きな手術を受けた方
  • フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)を投与された方
  • 血液凝固因子製剤を投与された方
  • 長期に血液透析を受けている方
  • 臓器移植を受けた方
  • 薬物濫用者、入れ墨をしている方
  • ボディピアスを施している

ここでは、1994年以前の輸血や手術による感染経路と、それ以降でも考えられる感染経路の2つに分けて解説します。

輸血や手術による感染

1992年以前に輸血や臓器移植を行った人、または1994年以前に大きな手術を行った人は、高い確率でHCVに感染しています。

輸血や手術による感染

当時はそもそも、血液がHCVに汚染されているかどうかを調べる技術がありませんでした。HCVに汚染された輸血用の血液を、そのまま患者に使用した可能性があるのです。血液以外にも手術で使われた止血剤(フィブリノゲン製剤や血液凝固因子製剤)が、HCVに汚染されていた可能性もあります。止血剤の原料は人間の血液だからです。止血剤を作る際にHCVを無力化する技術もなかったため、医療現場ではHCVウイルスが含まれる止血剤が、当たり前のように使われていました。

注射針の使い回しによる感染

技術が発達してからも、HCV感染は跡を絶ちません。感染する可能性が高いのは、注射針を刺す行為です。

医療行為で該当するのは血液透析者、医療行為以外ではボディピアスや入れ墨をする人、注射針を用いるドラッグの使用者などが該当します。透析医療の現場でHCV感染が起きる原因は、医療用具の交換や消毒が徹底されていないからです。HCVを含む血液が付着した手袋や医療器械、器具などが、そのまま別の患者にも使い回されている現状があります。医療の現場以外でも、ボディピアスや入れ墨、ドラッグの回し打ちなど、注射針を刺す行為によってHCVに感染します。

C型肝炎は知らず知らずのうちに悪化する

C型肝炎は肝癌へと進行する

C型肝炎の病状が進むと慢性肝炎を発症します。そこからさらに約20年の期間を経て肝硬変に、そして肝癌へと進行していくのです。

HCVに感染しても、ほとんどの人は自覚症状がありません。肝臓は変化のわかりづらさから沈黙の臓器とも呼ばれているのです。肝臓には、肝細胞の一部が壊れても残りの部分でカバーする能力があります。慢性肝炎や肝硬変で肝臓の機能が弱っても、自身で対処してしまうため、自覚症状が出にくいのです。知らず知らずのうちに症状が悪化するのはこのためです。

ここでは、肝癌に至るまでの「C型慢性肝炎」と「肝硬変」について、それぞれの症状を見ていきましょう。

C型慢性肝炎

C型慢性肝炎は、HCVに感染してから約6カ月にわたって肝臓の炎症が続いている状態を指します。自覚症状はほとんどありません。何となく体がだるい、疲れやすい、食欲がわかないなどの症状はありますが、少し体調が悪いだけと見過ごしてしまうのです。患者が自身でC型慢性肝炎だと気付くのは困難です。

肝硬変

肝硬変とは、肝臓の表面がでこぼこになったり、肝臓の組織が硬くなったりして、十分に機能しなくなった状態です。C型慢性肝炎が進行すると、肝硬変になります。肝硬変が悪化すると、症状が目に見えてあらわれます。

【肝硬変が悪化すると出る症状】
症状 具体的な変化
手掌紅斑 親指や小指の付けが赤くなる
クモ状血管腫 毛細血管がクモのような形で拡張し、皮膚に浮かび上がる
女性化乳房 男性の乳房が、女性のように大きくなる
黄疸 目や皮膚が黄色くなる

食欲がなくなったり体重が減少したりすると、肝硬変が進行している可能性があります。痛みがなくても病院に行きましょう。肝硬変をそのまま放置すると、ゆくゆくは肝癌を発症します。症状の進行や悪化を回避するためにも、日頃から定期健診を受けるなど、早期に治療をはじめられるよう心がけましょう。

C型肝炎のウイルスは血液検査で調べる

C型肝炎ウイルスに感染しているか血液検査で調べる

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかは、血液検査で調べます。C型肝炎を診断するためには、採取した血液からHCV抗体検査と遺伝子検査(HCV-RNA検査)の2種類の検査を行います。それぞれの検査についてみていきましょう。

C型肝炎ウイルスの検査内容

HCV抗体検査

抗体検査では、血液中にHCVの感染によって作られた抗体があるかを調べます。抗体検査で陽性が出れば、HCVに感染した経験があるとわかります。とはいえ、今現在も感染しているのかはわかりません。抗体はウイルスに感染したときに作られるため、過去に作られていた可能性もあるからです。C型肝炎の抗体を持っていれば、さらに詳しい遺伝子検査を行います。

遺伝子検査(HCV-RNA検査)

遺伝子検査では、血液中にHCVの遺伝子があるかを調べます。上のHCV抗体検査では、いま感染しているかどうかまではわかりません。遺伝子検査では、HCVウイルスそのものの遺伝子を探すため、いま体内にHCVがあるかどうかがわかります。遺伝子検査で陽性が出れば、現在進行形でHCVに感染していることがわかるのです。

C型肝炎の治療法は抗ウイルス療法と肝庇護療法

C型肝炎の治療法は抗ウイルス療法と肝庇護療法の2種類でC型肝炎ウイルスの排除と病気の進行を止める

C型肝炎の治療法は、抗ウイルス療法と肝庇護(かんひご)療法の2種類です。2つの治療法の目的は、C型肝炎ウイルスの排除と病気の進行を止めることです。それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。

抗ウイルス療法

抗ウイルス療法の目的は、体のなかからHCVウイルスを排除することです。抗ウイルス療法には、インターフェロン治療とインターフェロンフリー治療の2種類があります。

インターフェロン治療

インターフェロン治療は、インターフェロンという薬を注射する治療法です。

注射によって接種したインターフェロンが体の免疫に働きかけ、ウイルスと戦う組織を活性化させることによって、HCVを排除します。インターフェロン治療は、2014年までは主流な治療法でしたが、以降は単独で行うことは減りました。2014年に導入されたインターフェロンフリー治療が主流になったからです。インターフェロン治療は、治療の効果が血中のウイルス量や患者の体質によって変化します。副作用が強いという問題も解決していません。

インターフェロンフリー治療

インターフェロンフリー治療は、インターフェロンを使わずに飲み薬だけでHCVを排除する治療法です。

注射を使うインターフェロン治療に比べ、簡単に治療できるうえに副作用が少ないことが利点です。インターフェロンフリー治療は、2014年9月に導入されて以降、C型肝炎治療の主流になりました。とはいえ、すべての患者がインターフェロンフリー治療を受けられるわけではありません。持病(腎障害)の有無、服用している薬剤(抗不整脈薬やカルシウム拮抗薬)との飲み合わせによっては選択できない患者もいます。

肝庇護療法

肝庇護療法の目的は、肝炎の悪化や進行を抑えることです。飲み薬と注射薬を併用したり、別の治療法を組み合わせたりします。ウイルスの排除を目的とする抗ウイルス療法とは、治療方針が大きく異なるのです。肝庇護療法については、別の記事で詳しく解説しています。

肝庇護療法は、ほかの治療法と併用することで、より高い効果が得られます。代表的な治療法が、瀉血(しゃけつ)療法とインターフェロン少量長期投与です。

瀉血療法

瀉血療法とは、血中の有害物質を取り除くために、血液を抜き取る治療法です。血液から、肝臓に悪影響を与える「鉄」を取り除くことで、肝機能を保ちます。鉄は、体内の異物を攻撃する、活性酸素を作り出します。活性酸素はウイルスに感染した肝細胞を異物とみなし、細胞ごと攻撃してしまうのです。肝細胞を攻撃する活性酸素を減らすために、活性酸素の元となる鉄を取り除きます。

インターフェロン少量長期投与

インターフェロン少量長期投与とは、読んで字のごとく、少量のインターフェロン製剤を長期にわたって投与する治療法です。肝炎を沈静化させて、肝硬変の進行を抑えます。通常のインターフェロン療法と異なり、ウイルスの排除ではなく抑制が目的です。インターフェロンの副作用が出ない範囲で、時間をかけて少しずつ投与します。

C型肝炎の治療費は助成金で安くなる

C型肝炎の治療費は医療費助成の対象となっている

C型肝炎は治療費が高額なため、医療費助成の対象となっています。インターフェロン治療やインターフェロンフリー治療を受ける人なら、助成金で費用の負担が減ります。ここでは助成対象者と助成金額について解説します。

助成金の対象者

医療費の助成を受けられる対象は、C型肝炎の完治を目的として治療している人です。具体的には、C型慢性肝炎・肝硬変に対し、インターフェロン治療かインターフェロンフリー治療を受けている人が対象となります。肝庇護療法、および肝庇護療法の一環としてのインターフェロン注射は「完治」を目的としていません。そのため助成の対象ではないのです。

対象疾患 対象医療
C型慢性肝炎
  • インターフェロンフリー治療
  • インターフェロン治療+インターフェロンフリー治療
  • インターフェロン単独治療
HCVが原因の肝硬変
  • インターフェロンフリー治療
  • インターフェロン治療+インターフェロンフリー治療

また、C型肝炎の治療で助成金を受け取るには、以下の書類が必要です。

  • 肝炎治療受給者証交付申請書
  • 医師の診断書
  • 患者の氏名が記載された被保険者証等の写し
  • 患者の属する世帯の全員について記載のある住民票の写し
  • 市町村民税課税年額を証明する書類

提出書類に関してなにか疑問があれば、かかりつけの病院、または各都道府県の医療・保険課などの窓口で問い合わせてみましょう。

自己負担額

C型肝炎の医療費助成制度を利用すれば、治療費の自己負担額が、ひと月あたり1万円または2万円で抑えられます。自己負担額は、納めている住民税によって異なります。

住民税 自己負担額(月)
235,000円未満 1万円
235,000円以上 2万円

住民税は世帯全員の合算です。患者ひとりの課税年額ではないので、間違えないようにしましょう。助成制度を利用する場合は、住民税を納めている自治体に確認してみましょう。

まとめ

C型肝炎は、21世紀の国民病と言われるほど、日本人にとって身近でかかりやすい病気です。C型肝炎の原因はHCVというウイルスです。HCVに感染すると7割ほどの患者がC型慢性肝炎を発症させます。適切な治療を行わなければ、肝硬変、肝癌へと症状が進行していきます。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど、症状が表面化しにくい臓器です。気付いた時にはもう肝硬変や肝癌まで進行していた、ということがあります。そんな状況を避けるためには、定期的に健康診断をしっかり受けましょう。

もしC型肝炎になってしまっても、治療法が確立されているので安心です。適切な治療を行えば、C型肝炎は完治します。国が医療費の補助を行う制度もあるので、金銭面の負担も軽くなりました。「C型肝炎になっていないか確認したい」と思ったなら、まずは検査を受けてみましょう。

参考文献・参考サイト

性病の用語集「C型肝炎」は、以下のサイトや資料を参考に作成しました。