公開日
2017/08/15
更新日
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会社や学校の健康診断で行われている尿検査。「陽性反応が出てしまったけど、何が原因なの?」「生理中でも検査を受けて大丈夫?」など、尿検査に対してさまざまな疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。

ここでは、尿検査の結果の見方や陽性反応が出てしまう原因について、詳しく解説します。さらに、尿検査に関してのよくある疑問、尿検査を受ける前の注意点についても見ていきましょう。

蛋白や潜血ってなに?陽性反応が出た場合に考えられる病気

尿の検査項目は9つあります

「尿蛋白が+(陽性)になっていたけど、尿蛋白ってなに?どこか悪いの?」尿検査の結果には、蛋白や潜血など見慣れない項目がたくさん出てきます。普段は尿検査の項目の意味を気にしていなくても、実際に陽性反応が出ると戸惑ってしまいますよね。

それぞれ検査項目の意味から陽性反応が出た場合に疑われる病気まで、詳しく説明していきます。

紹介する検査項目は以下の9つです。

  1. 尿蛋白(にょうたんぱく)
  2. 尿潜血(にょうせんけつ)
  3. 尿糖(にょうとう)
  4. 尿比重(にょうひじゅう)
  5. 尿ビリルビン
  6. 尿ウロビリノーゲン
  7. 尿pH(ペーハー)
  8. 尿ケトン体
  9. 尿沈渣(にょうちんさ)

1.尿蛋白(にょうたんぱく)

尿検査の項目「尿蛋白」は、尿にあまり存在しないはずのタンパク質が含まれているかの検査です。検査値によって、腎機能の状態が確認できます。

腎臓がうまく機能していないと、タンパク質などの物質が尿に多く混ざってしまい、尿試験紙が反応を示します。つまり、尿蛋白が陽性となった場合は腎機能の異常が疑われるということです。

基準値

(-)陰性

陽性反応が出るメカニズム

腎臓や尿路などに異常があると、血液や尿を処理する器官が正常に機能せず、尿にタンパクが漏れ出します。タンパク質は筋肉や臓器、皮膚などをつくるため、体内には必要不可欠です。

体内をめぐって腎臓まで来た血液はろ過されて老廃物と栄養分に分かれます。通常なら老廃物だけが排出され、重要な栄養分であるタンパク質は再び血液中に戻るのです。

タンパク質が尿から体外に排出されることは、ほとんどありません。しかし、腎臓の機能がうまく働いていないと、タンパク質は体内に吸収されずに、尿といっしょに体外に排出されます。

疑われる病気

尿蛋白に異常値が出たときに疑われる病気は、すべて腎臓と尿路に関わる症状です。腎臓が血液をろ過する機能に起こる障害、腎臓の機能不全による血管の障害、尿路への感染症があります。

尿蛋白に異常が出たときは、腎臓が悪いのかもしれない、という可能性を疑いましょう。

  • 糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)
  • ネフローゼ症候群
  • 腎硬化症(じんこうかしょう)
  • 糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)
  • 尿路感染症
  • 尿路結石(にょうろけっせき)
  • 膀胱炎(ぼうこうえん)

2.尿潜血(せんけつ)

尿検査の項目「尿潜血」は、尿に血液が含まれているかの検査です。検査値によって、腎臓、尿路系の機能状態が確認できます。

これらの器官が炎症などで傷ついて出血を起こすと、尿に血液が混ざってしまい、尿試験紙が反応を示します。つまり、尿潜血が陽性となった場合は、腎臓、尿路系に異常があると考えられます。

基準値

(-)陰性

陽性反応が出るメカニズム

尿路や膀胱、腎臓などに異常があると、血液を処理する器官が正常に機能せず、尿に血液(赤血球)が漏れ出します。

通常、尿に血液が含まれていることはありません。尿の通り道である器官(腎臓・尿管・膀胱・尿道など)が、炎症などで傷ついて出血を起こすと、尿といっしょに血液も排出されます。目に見えて尿が赤くなくても、血液が混じっている場合もあります。

疑われる病気

尿潜血に陽性が出たときに疑われる病気は、主に腎臓と尿路系に関わる症状です。

腎臓が血液をろ過する機能に起こる障害、尿管に尿の成分が固まる障害、膀胱や尿道に炎症が起こる障害があります。尿潜血に異常が出たときは、腎臓や尿路系の異常を疑いましょう。

  • 腎臓系
    • 急性・慢性腎炎(きゅうせい・まんせいじんえん)
    • 腎結石(じんけっせき)
    • 腎膿瘍(じんのうよう)
    • 遊走腎(ゆうそうじん)
  • 尿管系
    • 尿管結石(にょうかんけっせき)
    • 尿管腫瘍(にょうかんしゅよう)
    • 尿管異物(にょうかんいぶつ)
  • 膀胱系
    • 膀胱炎(ぼうこうえん)
    • 膀胱結石(ぼうこうけっせき)
    • 膀胱腫瘍(ぼうこうしゅよう)
  • 尿道系
    • 前立腺炎(ぜんりつせんえん)
    • 前立腺腫瘍(ぜんりつせんしゅよう)
    • 尿道炎(にょうどうえん)
  • その他
    • 白血病(はっけつびょう)
    • 紫斑病(しはんびょう)
    • 溶血性疾患(ようけつせいしっかん)

3.尿糖(にょうとう)

尿検査の項目「尿糖」は、尿に糖が含まれているかの検査です。検査値によって、糖尿病にかかっているかどうかが確認できます。

体内に必要以上の糖分があると、尿に糖が混ざってしまい、尿試験紙が反応を示します。つまり、尿糖が陽性となった場合は糖尿病の疑いがあるということです。

基準値

(-)陰性

陽性反応が出るメカニズム

通常、糖分(ブドウ糖)は腎臓や膵臓で消費や再吸収が行われます。これらの器官に異常が発生すると、糖の処理が追いつかなくなるのです。その結果、糖が尿に漏れ出すことで陽性反応が出ます。

通常、糖は脳や体を動かす大事なエネルギー源となるため、体外に排出されることはありません。しかし、炭水化物やお菓子などを食べすぎると、体内には必要以上の糖分が入ってきます。その際、余分な糖は尿糖として体外に排出されます。

疑われる病気

尿糖に異常値が出た場合は糖尿病にかかっている恐れがあります。

4.尿比重(にょうひじゅう)

尿検査の項目「尿比重」は、尿中に含まれている尿素の濃度を調べる検査です。検査値によって、腎機能の状態が確認できます。

通常、尿は98%の水分と2%の尿素でできています。腎臓がうまく働いていないと、尿素の濃度が高い尿や低い尿が排出されるようになります。つまり、尿比重に異常値が出た場合は腎機能の異常が疑われるということです。

基準値

1.002~1.030

異常値が出るメカニズム

腎臓に異常があると、尿をろ過する機能が正常に働かなかったり、排出してはいけない栄養素が漏れ出したり、脱水症状になったりします。尿が濃縮されれば高比重に、尿が希釈されれば低比重になるのです。 血中の糖やナトリウムなどの物質量を一定に保つため、腎臓は余分な物質を尿として排出します。しかし、腎臓の働きが低下すると、尿中の濃度がうまく保てなくなります。尿素の濃度が高すぎる尿や低すぎる尿を排出し、異常値が出てしまうのです。

疑われる病気

尿比重に異常値が出たときに疑われる病気は、すべて腎臓に関わる症状です。腎臓の働きが低下すると、身体がむくむネフローゼ症候群や、尿が大量に排出される尿崩症といった症状などが現れます。尿比重に異常が出たときは腎臓が悪いかもしれない、という可能性を疑いましょう。

尿比重が高い場合
ネフローゼ症候群
糖尿病
心不全
尿比重が低い場合
ネフローゼ症候群
慢性腎炎(まんせいじんえん)
尿崩症(にょうほうしょう)

5.尿ビリルビン

尿検査の項目「尿ビリルビン」は、尿にビリルビンが含まれているかの検査です。ビリルビンとは、古くなった赤血球が分解されたときにできる物質のことです。検査値によって、肝臓や胆道の状態が確認できます。

肝臓や胆道がうまく機能していないと、尿にビリルビンが混ざってしまい、尿試験紙が反応を示します。つまり、尿ビリルビンが陽性となった場合は肝臓や胆道の異常が疑われるということです。

基準値

(-)陰性

陽性反応が出るメカニズム

肝臓や胆道(たんどう)に異常があると、血液中にビリルビンが増え、尿のなかのビリルビンも増加します。 古い赤血球は固くなり、血管を通れないため、分解されてビリルビンという物質になります。通常、ビリルビンは肝臓の働きにより80%は胆汁の中に捨てられ、20%は腸に吸収されます。しかし、肝蔵の機能が弱まるとビリルビンが本来の場所に運ばれず、尿中や血中に流れてしまい、陽性反応を示すのです。

疑われる病気

尿ビリルビンに異常値が出たときに疑われる病気は、肝臓や胆道に関わる症状です。肝臓に炎症が起こる障害、肝臓が硬くなる障害、胆道に胆石(胆汁が固まったもの)ができる障害があります。尿ビリルビンに異常値が出たときは、肝臓や胆道の異常を疑いましょう。

  • 肝炎(かんえん)
  • 肝硬変(かんこうへん)
  • 肝がん(かんがん)
  • 胆道疾患(たんどうしっかん)

6.尿ウロビリノーゲン

尿検査の項目「尿ウロビリノーゲン」は、尿にウロビリノーゲンが含まれているかの検査です。ウロビリノーゲンとは、ビリルビンが腸内細菌によって分解された物質のことです。検査値によって、肝臓や胆のう、胆道の状態が確認できます。

肝臓の機能が低下している場合、尿に多くのウロビリノーゲンが混ざります。胆のうや胆道の機能が低下している場合、尿にウロビロノーゲンは全く含まれません。つまり、尿ウロビリノーゲンが陽性を示すときは肝臓が悪い可能性があり、陰性を示すときは胆のうや胆道の異常が疑われるということです。

基準値

(±)弱陽性

陽性・陰性反応が出るメカニズム

腸に吸収されたビリルビンは腸内細菌に分解されてウロビリノーゲンになります。ウロビリノーゲンの80%は便といっしょに排出されますが、20%は血中に流れます。血中に流れるほんの一部のウロビリノーゲンは尿といっしょに排出されるため、健康な状態なら弱陽性を示します。

陽性反応を示す場合、肝機能が弱まっていると考えられます。肝機能が弱まるとビリルビンが胆汁の中に排出されず、血中に多く流れてしまいます。ウロビリノーゲンの元となるビリルビンが血中に増えると、同時にウロビリノーゲンも増加します。ウロビリノーゲンが血中から尿中へ多く流れ出すようになり、陽性反応を示すのです。

陰性反応を示す場合、胆のうや胆道に異常があると考えらます。通常、ビリルビンが肝臓から小腸に運ばれてウロビリノーゲンになります。しかし、その通り道にある胆のうや胆道が詰まっていると、ウロビリノーゲンは生成されず、尿中にも含まれないないため陰性反応を示すのです。

疑われる病気

尿ウロビリノーゲンに異常値が出たときに疑われる病気は肝臓と胆道に関わる症状です。ウイルスの感染によって肝臓が炎症を起こす障害、胆道が閉鎖されて胆汁が流れなくなる障害があります。尿ウロビリノーゲンに異常が出たときは、肝臓もしくは胆道の異常を疑いましょう。

陽性反応が出た場合
急性・慢性肝炎(きゅうせい・まんせいかんえん)
肝硬変(かんこうへん)
陰性反応が出た場合
胆道閉塞(たんどうへいそく)
胆石(たんせき)

7.尿pH(ペーハー)

尿検査の項目「尿pH」は、尿が酸性かアルカリ性かを調べる検査です。検査値によって、糖尿病やアルコール中毒症、尿路系の感染症などさまざまな病気が確認できます。

糖分やアルコールの過剰摂取、発熱を起こすと尿は酸性になり、尿路に感染症を起こすと、アルカリ性を示します。つまり、尿が酸性を示した場合は糖尿病やアルコール中毒症、発熱が疑われるということです。尿がアルカリ性を示した場合は、尿路感染症が疑われます。

基準値

pH4.8~7.5

陽性反応が出るメカニズム

激しい下痢や発熱などの症状では酸性に、腎臓から尿道までの尿路の感染症が疑われる場合はアルカリ性になります。

通常の尿は、pH4.8~7.5の弱酸性から中性です。しかし、糖やアルコールの過剰摂取など、さまざまな原因から尿はpH4.7以下の酸性に変化します。

また、膀胱炎などの尿路感染症にかかると、尿路に侵入した細菌によって、尿はpH7.5以上のアルカリ性を示します。

疑われる病気

糖尿病にかかったり、発熱を起こすと尿pH4.7以下の酸性に傾きます。尿路に感染症を起こしたり、腎臓に異常が起こると尿はpH7.6以上のアルカリ性に傾くようになります。

pH4.7以下の酸性の場合
糖尿病
発熱
アルコール中毒
呼吸性・代謝性のアシドーシス
pH7.6以上のアルカリ性の場合
尿路感染症(にょうろかんせんしょう)
腎疾患(じんしっかん)

8.尿ケトン体

尿検査の項目「尿ケトン体」は、尿にケトン体が含まれているかの検査です。ケトン体とは、脂肪が燃えた際にできる物質のことです。検査値によって糖分がエネルギーに変えられているか、体内に糖分が十分に備わっているかが確認できます。

本来のエネルギー源である糖のかわりに脂肪が多く消費されている場合、ケトン体が尿に混ざり、尿試験紙が反応を示します。つまり、尿ケトン体が陽性を示した場合は糖をエネルギーに変えられなくなる糖尿病の恐れがあります。もしくは、体内に糖が不足しているために飢餓状態や脱水状態が疑われます。

基準値

(-)陰性

陽性反応が出るメカニズム

通常、体は糖を消費して、体を動かすエネルギーに変えます。 しかし、糖尿病の人は糖をエネルギーに変える働きが弱まっているため、代わりに脂肪を消費してエネルギーに変えます。また、体内に糖が不足している飢餓状態などの場合も同様に、脂肪を消費してエネルギーに変えるのです。 脂肪をエネルギーに変えると、その分ケトン体も体内に増えていき、尿中にも流れだします。

疑われる病気

尿ケトン体に異常値が出たときは、糖の代わりに脂肪を燃焼させる糖尿病の疑いがあります。もしくは、糖が足りていない飢餓状態や脱水状態である可能性が考えられるでしょう。

  • 糖尿病
  • 飢餓状態(無理なダイエット中など)
  • 下痢時
  • 嘔吐時
  • 脱水時

9.尿沈渣(にょうちんさ)

尿検査の項目「尿沈渣」は、尿に含まれる赤血球や白血球、細胞、結晶成分の数を調べる検査です。検査値によって尿路系、腎臓の状態が確認できます。

尿路系や腎臓に異常が起こると体内に赤血球や白血球、細胞、結晶成分が増え、尿中に多く混ざります。尿沈渣が異常値を示した場合、腎臓や尿路系の異常を疑いましょう。

基準値

赤血球
0~4/HPF
白血球
0~4/HPF
腎尿細管上皮細胞
1未満/HPF
扁平上皮細胞
1未満/HPF
硝子円柱
1未満/WF

数値が出るメカニズム

赤血球
尿潜血と同様、尿の通り道である器官が炎症して傷ついていると、尿中に基準値外の数の赤血球(血液)が検出されます。
白血球
白血球には、細菌や異物から体を守る働きがあります。体内で細菌が増殖して炎症を起こしていると、白血球が増え、尿中に基準値外の数の白血球が検出されます。
上皮細胞
上皮細胞(扁平上皮細胞、腎尿細管上皮細胞)とは、体の粘膜をつくっている細胞です。尿路系の器官に炎症が起きると細胞が剥がれ落ち、尿中にいくつかの上皮細胞が検出されます。
円柱細胞
円柱細胞とは、尿の成分が腎臓の細尿管という細い管の中で円柱状に固まったものです。尿路や腎臓に異常が起きると、円柱細胞が形成されてしまい、尿中に検出されます。
結晶成分
結晶成分は、シュウサンカルシウムや尿酸などの成分が固まってできたものです。痛風や腎結石によって体内に結晶ができると、尿中にも結晶成分がいくつか検出されます。

疑われる病気

尿沈渣に異常値が出たときに疑われる病気は、主に腎臓と尿路に関わる症状です。膀胱や尿道に炎症が起きる障害、腎臓に結石(成分が固まったもの)ができる障害があります。尿沈渣に異常が出たときは、腎臓や尿路に異常がある可能性があるのです。

  • 赤血球が多い場合
    • 腎盂腎炎(じんうじんえん)
    • 膀胱炎(ぼうこうえん)
    • 尿道炎(にょうどうえん)
    • 腎結石(じんけっせき)
  • 白血球が多い場合
    • 腎盂腎炎(じんうじんえん)
    • 膀胱炎(ぼうこうえん)
    • 尿道炎(にょうどうえん)
  • 上皮細胞が多い場合
    • 膀胱炎(ぼうこうえん)
    • 尿道炎(にょうどうえん)
  • 円柱細胞が多い場合
    • 糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)
    • ネフローゼ症候群
  • 結晶成分が多い場合
    • 痛風(つうふう)
    • 腎結石(じんけっせき)
    • 急性肝炎(きゅうせいかんえん)

参考:やさしい尿検査のお話 腎臓内科 石田千尋 / 山陰労災病院:PDF

尿検査の疑問点

「生理中でも尿検査できる?」「健康診断の尿検査で妊娠や性病は分かる?」尿検査に関してこのような疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。生理中に検査できるのか、妊娠や性病が発覚するのかといった疑問に答えます。

生理中でも尿検査できる?

生理中は尿検査ができません

基本的に生理中は尿検査ができません。生理中に尿検査をしてしまうと、尿中に血液が混ざり、尿潜血に陽性反応が出る恐れがあります。陽性反応が出た場合は再検査になってしまうので、生理中に尿検査をしても二度手間です。尿検査は生理の日を避けて受けてください。どうしても尿検査の日をずらせない場合、医師に生理中であることを一言伝えておきましょう。生理中であることを考慮して、医師が検査結果を判断してくれます。

参考:よくあるご質問Q&A 埼玉メディカルセンター 健康管理センター / 地域医療機能推進機構

健康診断の尿検査で妊娠は分かる?

健康診断の尿検査で妊娠しているか確認できません

学校や会社で行う健康診断の尿検査では、妊娠しているかどうかは分かりません。なぜなら、健康診断の尿検査と妊娠しているかを調べる尿検査では、検査する項目が異なるからです。

健康診断で受ける尿検査の項目は、尿蛋白や尿糖、尿潜血などです。それに加えて妊娠しているかを調べる尿検査の項目には、「hCGホルモン」が含まれています。hCGホルモンとは受精卵が着床し、妊娠が成立すると分泌されるホルモンのことです。

健康診断の尿検査は、健康状態を調べるために行われます。妊娠しているかを見るわけではないので、「hCGホルモン」は項目に含まれていません。そのため、健康診断の尿検査では妊娠をしているかどうかは確認できないのです。

健康診断の尿検査で性病は分かる?

学校や会社で実施されている健康診断の尿検査では、性病に感染しているかどうかは分かりません。なぜなら、性病の尿検査と健康診断の尿検査では、検査方法が異なるからです。それぞれどのような方法で調べるのか説明します。

性病の尿検査

尿を使って性病の感染を検査する方法の1つに顕微鏡検査があります

性感染症の中で、尿から感染しているかが確認できるのはクラミジア淋病トリコモナスの3つです。その他の性感染症は尿ではなく、患部の細胞や分泌物、血液を採取して検査します。

クラミジア、淋病、トリコモナスの感染の有無を尿から調べる場合、検査方法は「顕微鏡検査」「培養検査」「遺伝子検査」いずれかが用いられます。

顕微鏡検査
顕微鏡で尿中に病原体がいるかどうか確認する方法
培養検査
培養液(病原体を増やす液)で、病原体を増やして確認する方法
遺伝子検査
遺伝子装置で病原体のDNAを増やし、確認する方法

健康診断の尿検査

代替テキスト

健康診断で行われる尿検査では、「尿試験紙検査」が用いられます。尿試験紙検査とは、尿に試験紙を浸して色の変化を確認し、陰性か陽性かを判断する検査方法です。

尿沈渣は、尿検査の項目のなかでも唯一試験紙ではなく、顕微鏡を使用します。尿沈渣の検査では、尿中の白血球や細胞の数を調べるため、顕微鏡を使う必要があるのです。

「このときに病原体が確認できれば、性病に感染しているかどうかも分かるのでは?」と思いますよね。結論から言ってしまえば、尿検査と同時に性感染症の病原体の確認はできません。

性感染症の判別を目的とした尿検査では、病原体が多く含まれる出はじめの尿(初尿)を採取します。これに対し、健康診断の尿検査では、病原体が含まれない中間尿を採取します。目的によって病を採取するタイミングが異なるため、顕微鏡を用いる尿沈渣の検査でも、性病の有無は判断できないのです。

参考:尿定性検査の基礎 / 愛知県臨床検査技師会:PDF

尿検査の注意点!アルコールや食事は何時間前までとれる?

尿検査を行なう時間にあわせて飲酒は10時間前に済ませんましょう

尿検査の直前にアルコールや食事、お茶や薬を摂取してしまうと、検査結果に影響が出てしまう可能性があります。これらは、何時間前までなら摂取してもよいのでしょうか?摂取してよい時間をそれぞれお答えします。

尿検査(健康診断)前の制限
検診前日
午後10時以降
検診当日
起床から検診終了まで
アルコール × ×
× (注1)
食事 × ×
薬やサプリ △ (注2)

(注1) 検診の2時間前までならコップ1~2杯の水に限り可能

(注2) 心臓病・高血圧症の薬のみ服用可能

アルコール

お酒を飲むなら、尿検査を行う10時間前までに済ませておきましょう。アルコールは10時間経てば分解されると言われます。とはいえ、人によって分解される時間は異なるので、心配なら前日は丸一日アルコールを控えたほうが確実です。

お茶

お茶も尿検査が行われる10時間前から控えてください。お茶は一見影響はなさそうですが、お茶に含まれているビタミンCによって、検査結果に影響が出ることがあります。検査近くに水分が摂りたくなったら、お茶ではなく水にしましょう。水であれば、成分による影響はありません。しかし、あまり大量に飲んでしまうと、尿比重の数値に影響します。検査当日の朝に1杯ほど飲む程度にしておきましょう。

食事

食事は尿検査が行われる12時間前までに済ませておきましょう。通常、食べ物が消化するのにかかる時間は12時間と言われています。それまでに食事をすませておけば、尿検査に影響することはありません。

尿検査が午後行われる場合、それまで何も口にしないのは辛いですよね。午後に行われるのなら、6時間前に食事を済ませておいてください。ただし、肉類や脂っこい食事、糖分が多く含まれるものは避けましょう。食パン1枚や紅茶1杯程度なら検査に影響しません。

病院やクリニックによって食事を済ませておく時間が異なるため、案内に記載されている場合はその時間に従いましょう。

参考:受診についてのお願い / 一般財団法人 みどり健康管理センター

薬やサプリ

薬やサプリは10時間前に服用しておきましょう。10時間経てば、薬やサプリの成分が検査に影響することはないと言われています。

持病で決まった時間に薬を服用しなければいけない場合、検査前に医師に伝えておきましょう。検査前に伝えるのが難しければ、検査後に服用した薬を伝えてください。