公開日
2017/08/01
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「膣トリコモナス症ってどんな性感染症なの?」「トリコモナスに感染する原因は?」性感染症といえば、感染者の多い性器クラミジアや淋病などがメジャーです。それに比べると「膣トリコモナス症」についての情報は少ないため、どのような性感染症なのか、よく知らない人が多いのではないでしょうか。

ここでは膣トリコモナス症に関する、基礎的な知識を幅広く紹介します。紹介する内容は以下の5つです。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

膣トリコモナス症に感染する原因は?

膣トリコモナス症は、「トリコモナス原虫」という寄生虫が体内に入ることで感染します。感染経路は主に性行為ですが、まれに日常生活でも感染するのです。それぞれ、詳しく紹介します。

感染する原因のほとんどは性行為

膣トリコモナス症が感染のほとんどは性行為によるもの

膣トリコモナス症が感染する主な原因は性行為です。

膣性交はもちろん、オーラルセックスや素股など、挿入を伴わない行為でも膣トリコモナス症に感染します。つまり、相手の性器に触れる行為であれば感染してしまうのです。

キスは相手の性器に触れないため、感染しません。

感染する行為 感染しない行為
  • 膣性交
  • 口膣性交
    • オーラルセックス
    • フェラチオ
  • 素股
キス

まれに日常生活で感染することも

膣トリコモナス症が感染する主な原因は性行為ですが、まれに日常生活でも感染します。家族やパートナーが膣トリコモナス症に感染していたら、とくに注意しましょう。膣トリコモナス症の患者と生活をともにする際、避けるべき行為は以下の3つです。

  • タオルを共有する
  • トイレを共有する
  • 一緒にお風呂に入る

トリコモナス原虫は水中で長く生息します。濡れたタオル、水っ気の多いトイレやお風呂はトリコモナス原虫が潜んでいる可能性があります。そのため、タオルやトイレ、お風呂を共有すると、そこから感染する恐れがあるのです。とはいえ、共に生活している以上、トイレやお風呂は共有せざるを得ません。膣トリコモナス症患者と共同生活していても感染を防止できる方法は、このページの最後で紹介します。

参考:性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 / 日本性感染症学会:PDF

再び発症するのはパートナーが原因!?

膣トリコモナス症は完治しても、パートナーから再感染してしまう場合があります

膣トリコモナス症が完治したにもかかわらず、再び発症してしまった経験はありませんか?それは、あなたのセックスパートナーに原因があるかもしれません。

膣トリコモナス症が治ったと思っていても、体内にトリコモナス原虫が残っており、そこから再発する場合もあります。そのような再発とは違い、膣トリコモナス症が完治していても、パートナーから再感染してしまう場合もあるのです。

あなた自身が膣トリコモナス症に感染した場合、パートナーに移している確率は80%にものぼります。そのため、膣トリコモナス症に感染した疑いがある場合、自分だけでなくパートナーもいっしょに検査をする必要があるのです。

とくに、男性は膣トリコモナス症に感染してもあまり症状が現れません。症状がないことから、「検査する必要はない」と思いがちですが、それは大きな間違いです。再発を防ぐためには、パートナーに症状がなかったとしても、必ずいっしょに検査を受けて治療しましょう。

参考:トリコモナス|性病について / 山の手クリニック

膣トリコモナス症はどんな症状?

膣トリコモナス症に感染すると、どのような症状が現れるのでしょうか。男性は尿道のかゆみや排尿時の痛み、女性は膣や外陰部のかゆみやおりものの異常などが見られます。膣トリコモナス症に感染した場合の症状を、男女別に紹介しましょう。

男性の症状

膣トリコモナス症に感染した男性の症状

男性の場合、膣トリコモナス症に感染すると「尿道炎(にょうどうえん)」や「前立腺炎(ぜんりつせんえん)」になります。尿道炎や前立腺炎を放置していると、さらに悪化して「精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)」を引き起こすので、注意が必要です。それぞれ、体に以下のような症状があらわれます。

尿道炎 前立腺炎 精巣上体炎
  • 膿が尿道から出る
  • 尿道のかゆみや違和感
  • 排尿時の軽い痛み
  • 排尿時の軽い痛み
  • 残尿感
  • 陰嚢(たまのふくろ)の痛み
  • 陰嚢の発熱
  • 陰嚢の発赤

女性の症状

膣トリコモナス症に感染した女性の症状

女性の場合は膣トリコモナス症に感染すると、膣内や陰部のかゆみ、おりものの変化といった症状が起こります。それだけでなく、排尿時に軽い痛みが伴う場合もあるのです。

トリコモナスに感染した場合のおりものと、正常のおりものの違いを表にしました。

トリコモナスに感染した
場合のおりもの
正常のおりもの
におい 魚が腐ったような
生臭いにおい
無臭・すっぱい
状態 泡状 サラサラ・粘り気

性器のかゆみやおりものの変化といった症状は、「膣トリコモナス症」によって起こります。排尿時に痛みが伴う場合は、膣トリコモナス症に合併して「尿道炎」を発症しています。このような症状を放置していると、さらに進行して「骨盤内感染症(こつばんないかんせんしょう)」や「膀胱炎(ぼうこうえん)」を引き起こしてしまうのです。とくに、骨盤内感染症は不妊や早産の原因になるので、注意が必要です。骨盤内感染症や膀胱炎は、以下のような症状があらわれます。

骨盤内感染症 膀胱炎
  • 発熱(38~40℃)
  • 悪寒
  • 吐き気
  • 下痢
  • 腹痛
  • おりものの増加
  • 頻尿
  • 排尿後の痛み
  • 残尿感
  • 尿の変化
  • 腹痛
  • おりものの増加
    • 白く濁る
    • 血が混じる

膣トリコモナス症の検査方法は?病院で受診

先ほど説明したような症状があらわれた場合、早めに病院へ行きましょう。膣トリコモナス症は、放置しても自然に治ることは絶対にありません。少しでも疑わしい症状があったらすぐに検査を受けてください。

膣トリコモナス症に限らず、性感染症の検査に不安をもつ人が多いと思います。しかし、検査は簡単で、痛みも伴わないので心配はいりません。膣トリコモナス症の検査では、男性は尿を、女性はおりものを採取します。では、詳しい検査方法を見ていきましょう。

男性は尿を採取

男性の膣トリコモナス症の検査は尿の採取から

男性が膣トリコモナス症の検査をする場合、一般的に 尿検査します。尿を紙コップに入れ、トイレにある窓口に置くだけで検査は終了です。

注意しなければならないのが、尿の出はじめである「初尿」を紙コップに入れることです。尿が出ている途中の「中間尿」より、「初尿」のほうがトリコモナス原虫が多く検出されます。そのため、「初尿」を採取することでより正確な検査ができるのです。

女性はおりものを採取

男性の膣トリコモナス症の検査はおりものの採取から

女性が膣トリコモナス症の検査をする場合、内診台にあがっておりものを採取します。消毒膣鏡という器具で膣の中を広げ、膣の奥を減菌綿棒で軽くこすり、おりものを採取していきます。「膣の中に器具を入れるなんて痛そう...」と不安に思ってしまいますが、痛みはあまり感じません。緊張せずに、リラックスして検査を受けましょう。

参考:橋本信也・櫻林郁之介「産婦人科検査/感染症に関する検査, 最新ナースのための検査マニュアル」 P247 / 照林社

膣トリコモナス症の治療薬「フラジール」とは

膣トリコモナス症に感染した場合、病院では一般的に 「フラジール」という治療薬が処方されます。気軽に市販薬で治したいところですが、残念ながら膣トリコモナス症の市販薬はありません。膣トリコモナス症を治療するには、病院へ行ってフラジールを処方してもらいましょう。

フラジールには経口剤タイプ(フラジール内服錠)と膣錠タイプ(フラジール膣錠)があります。それぞれの使い方や使用する際の注意点を説明します。

フラジールの使い方

フラジール内服錠と膣錠の使い方をそれぞれ表にまとめました。

フラジール内服錠 フラジール膣錠
服用(使用)回数 1日2錠 1日1錠
使用期間 10日間 10日間
延長可能な日数 延長不可 4日間

基本的な使用期間は、フラジール内服錠、膣錠ともに10日間です。

しかし、10日間使用しても症状が改善しなかった場合、フラジール膣錠のみ4日間の延長が可能です。使用を延長する際は、必ず医師に確認を取ってから行ってください。

なおフラジール内服錠は、10日間服用したら、それ以上は延長できません。フラジール内服錠で治療を続ける場合、10日間で服用を一旦やめ、1週間あいだを置いてから服用を再開する必要があります。

参考:医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書(案) メトロニダゾール 細菌性腟症の効能追加 / 厚生労働省 :PDF

妊娠初期や授乳中はフラジール内服錠を使用できない

妊婦初期(12週未満)や授乳中はフラジール内服錠を服用できません。なぜなら、フラジール内服錠は、お腹の赤ちゃんや乳幼児に対する安全性が分かっていないからです。ただし、妊娠中期(14週以上)以降であれば、胎児に大きな影響はなく、服用が可能であるとされています。

妊婦(12週未満)と授乳婦が膣トリコモナス症の治療を行う場合、フラジール内服錠での代わりに、フラジール膣錠が用いられます。フラジール膣錠は、内服錠と比べると、胎児や新生児への影響が少ないとされているのです。

フラジール内服錠 フラジール膣錠
妊娠初期
(12週未満)
×
妊娠中期
(14週以上)
授乳中 ×

〇使用可 ×使用不可

参考:疾患別診断と治療/腟トリコモナス症 / 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016:PDF

膣トリコモナス症の予防方法は?

膣トリコモナス症の予防方法の1つにコンドームの使用があります

膣トリコモナス症に感染しないためには、とくに性交時の予防が重要です。近しい人のなかに膣トリコモナス症患者がいる場合、日常生活でも予防する必要があります。性交時の予防方法3つ、日常生活の予防方法3つをそれぞれ紹介します。

膣トリコモナス症の予防方法(性交時)
コンドームを使用する
セックスパートナーをひとりに限定する
生理中のセックスを避ける

性交時のくわしい予防方法は、以下のページをご覧ください。

参考記事:トリコモナスの予防法!これでセックスも日常生活も安心! / 性病治療薬の通販

膣トリコモナス症の予防方法(日常生活)
タオルを共有しない
トイレの便器は除菌してから使用する
一緒にお風呂に入らない(お風呂は乾燥や消毒したあとに使用する)

日常生活のくわしい予防方法は以下のページをご覧ください。

参考記事:トリコモナス症の原因は男女とも膣トリコモナス原虫 / 性病治療薬の通販

まとめ

膣トリコモナス症の「原因・症状・検査方法・治療薬・予防方法」5つに関して表にまとめました。

膣トリコモナス症が疑われる症状がある場合に大切なのは、早めに病院で検査をすることです。膣トリコモナス症を放置しても、自然に治ることは決してありません。放置すると症状が悪化したり、知らず知らずのうちに周囲に感染させてしまいます。早めの検査や治療、性交時の予防を心がけましょう。

原因 主に性行為で感染、まれに日常生活でも感染
症状 男性
  • 尿道のかゆみ
  • 排尿時の痛み
  • 尿道から膿が出る
女性
  • 膣内、外陰部のかゆみ
  • おりものの変化
  • 排尿時の痛み
検査方法 男性 尿を採取
女性 おりものを採取
治療薬
  • フラジール内服錠
  • フラジール膣錠
予防方法 性交時
  • コンドームの使用
  • 特定のセックスパートナーに
    限定する
  • 生理時にセックスをしない
日常生活
  • タオルを共有しない
  • トイレの便器は除菌してから
    使用する
  • 一緒にお風呂に入らない