
トリコモナス症の原因は男女とも膣トリコモナス原虫
「性行為の経験がないのに、トリコモナスに感染した」「完治したのに、再び感染した」膣トリコモナス症に感染する原因や再発する原因は何でしょうか。
膣トリコモナス症に感染する原因になる「膣トリコモナス原虫」という寄生虫です。膣トリコモナス原虫は感染者との性行為や日常生活での接触によって感染します。膣トリコモナス症の原因を理解し、感染しにくい行動を心がけましょう。
膣トリコモナス症の原因は「膣トリコモナス原虫」
膣トリコモナス症を発症する原因は、膣トリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)という寄生虫です。膣トリコモナスが体内に侵入することによって、膣トリコモナス症が発症します。トリコモナス原虫の大きさは0.1㎜程度で、肉眼では見えません。容姿は、ゾウリムシのような形をしていて、鞭毛(べんもう)と呼ばれる長いしっぽを持っています。この長いしっぽを動かしながら、自分で自由に移動することができます。
膣トリコモナス原虫の特徴は、水に強く乾燥に弱い、低温に強く高温に弱い点です。
- 水に強く、乾燥に弱い
- 低温に強く、高温に弱い
膣トリコモナスは水気の多い場所を好み、長時間生息することができます。ただし、乾燥に弱いため、乾燥状態が続くと死滅するという特徴を持っています。
膣トリコモナス原虫が炎症を起こすメカニズム
膣トリコモナス原虫は、どのようにして膣トリコモナス症を発症させるのでしょうか。トリコモナス原虫は、性器や口から体内に侵入します。侵入したトリコモナス原虫は、様々な臓器に移動をして寄生します。女性だと膣内や子宮頸管、下部尿路に寄生します。男性だと、尿路や前立腺に寄生します。トリコモナス原虫が臓器に寄生して炎症を起こすことで、膣トリコモナス症が発症するのです。
膣トリコモナス症はどんな行為で感染するの?
膣トリコモナス症はどのような行為から感染するのでしょうか。膣トリコモナス原虫の感染経路のうち、最も多いのが膣トリコモナス症感染者との性行為です。ほとんどは性行為によって感染しますが、感染者と性行為をしなくても、日常生活のなかで感染することもあるのです。
トリコモナスへの感染は膣性交をはじめとした性行為

膣トリコモナス症が感染する主な原因は性行為です。性行為の中でも一番感染しやすいのは膣性交です。膣性交の他にも、オーラルセックスや素股など、性器と接触する行為は感染します。
膣性交
膣トリコモナス症に感染する主な原因は膣性交です。トリコモナス原虫は膣や前立腺など、性器周辺の粘膜に寄生しています。セックスは相手の性器の粘膜に触れるため、膣トリコモナス症が感染しやすいのです。コンドームをつければ、性器同士が直接触れ合うことを避けられます。日ごろからコンドームをつければ、感染する可能性はぐっと下がるでしょう。
オーラルセックス・素股
オーラルセックスでも膣トリコモナス症に感染することがあります。オーラルセックスでは、性器の粘膜が口腔内に触れるからです。ただし、粘膜同士が触れるからといっても、トリコモナス原虫は口に寄生するわけではありません。口腔内に付着したトリコモナス原虫は、口から膣や前立腺などに移動し、そこで炎症を起こすのです。
また、素股でも膣トリコモナス症に感染します。素股は男性器を女性が股にはさみ、圧迫・摩擦する行為です。性器の粘膜同士が触れると、トリコモナス原虫は性器から体内へと侵入し、膣や前立腺などに寄生して炎症を起こすのです。
トリコモナスへの感染は日常生活のなかにも潜んでいる

ここまでに説明してきたように、膣トリコモナスへの感染原因は性行為です。ただし、感染者と性行為をしなくても、まれに日常生活のなかで感染することがあります。感染者が使ったタオルを共有する、いっしょにお風呂に入る、などの行為は感染の恐れがあります。
タオルを共有する
膣トリコモナス症の患者が使ったタオルを共有すると、感染してしまう可能性があります。患者がタオルで性器周辺を拭き取ると、タオルに粘膜が付着する可能性があるからです。タオルに触れることによって、粘膜内の膣トリコモナス原虫が体内に入り込んで感染します。
濡れたままのタオルは特に注意が必要です。なぜなら、上で説明したとおり、膣トリコモナス原虫は、水中で長時間生息できるからです。
汚染されたタオルを一度洗濯して乾燥させた場合、膣トリコモナスは死滅するのでしょうか。膣トリコモナスは乾燥に弱いものの、タオルなどの一般的な生活用品を用いた試験結果はありません。
1959年に発表された資料(膣トリコモナスの感染経路の考察)には、「乾燥に対する抵抗」の実験結果が記されています。実験では膣トリコモナス原虫が20分間は生存、25分以上で死滅しました。まったく同じ条件ではないものの、タオルも一定時間乾燥させることで、膣トリコモナスを死滅させることができそうです。ただし、現状では明確な基準(乾燥させる温度・時間)がないため、タオルの共有は避けた方が無難です。
一緒にお風呂に入る
膣トリコモナス患者と一緒にお風呂に入ると感染する恐れがあります。浴槽に一緒に浸からることはもちろん、洗い場で感染することもあるので注意が必要です。先ほども説明したように、トリコモナス原虫は水中で長時間生息ができます。そのため、水気の多いお風呂場は感染しやすいのです。膣トリコモナス症患者は一番最後に入ることをおすすめします。どうしても、膣トリコモナス症患者が使用した後にお風呂を使わなければならないときのために、予防対策を紹介します。
- お風呂場をしっかり乾燥させる
- ポピドンヨード(イソジン)を100倍に薄めたものを霧吹きに入れる。それをお風呂場に振りかけ、1分待つ
トリコモナス原虫は乾燥に弱いため、お風呂場を乾燥すさせることで、感染を防げます。できるだけ、水気がなくなるまで乾燥させた方がより安全でしょう。
うがい薬として用いられるイソジンは、膣トリコモナス症への感染を効果的に防ぎます。イソジンの主成分であるポピドンヨードは、トリコモナス原虫を死滅させます。イソジンの他にも、一般用家庭で使用されている消毒用エタノールでも代用可能です。イソジンや消毒用エタノールはドラッグストア、薬局で気軽に手に入ります。
安心して!膣トリコモナス症が感染しない行為

一見すると感染の可能性がありそうな行為でも、まったく問題ない場合があります。例えば、キスでは膣トリコモナスに感染しません。日常生活で患者と料理や食器を共有しても問題ありません。日常生活ではあまり神経質になる必要はないでしょう。
キス
膣トリコモナス症はキスでは感染しません。トリコモナス原虫は膣や前立腺、尿道など生息できる場所が決まっていて、口の中では生きていけません。そのため、口の中にトリコモナス原虫は存在しておらず、膣トリコモナス症患者とキスをしても感染することはないのです。
食事や食器を共有する
膣トリコモナス症患者と食事や食器を共有しても、感染することはありません。うえで説明したように、口の唾液にはトリコモナス原虫は生息できません。そのため、食事や食器を共有して膣トリコモナス症患者の唾液が付着しても問題ないのです。
一緒に衣類を洗濯する
タオルの共有でも説明したように、洗濯物も乾燥させれば問題ありません。患者の衣類を洗濯したら、乾燥機や天日干しでしっかり乾燥させましょう。洗濯用洗剤も一般的な洗剤で大丈夫です。上でも説明した通り、トリコモナス原虫は乾燥させてしまえば死滅します。しっかり乾燥させることで、感染を防げるのです。
性行為 | 日常生活 | |
---|---|---|
感染する行為 | 膣性交・オーラルセックス・素股 | タオルの共有・患者とお風呂に入る |
感染しない行為 | キス | 洗濯・食事や食器の共有 |
繰り返す膣トリコモナス症。再感染する原因はなに?

膣トリコモナス症は完治しても再び感染する場合があります。なぜ、繰り返し感染してしまうのでしょうか。膣トリコモナス症が再感染する原因は2つあります。
- パートナーからの再感染
- 体内に残っていたトリコモナス原虫からの再感染
それぞれ膣トリコモナス症に再び感染する理由を詳しく見ていきましょう。
パートナーが膣トリコモナス症に感染している
あなた自身のトリコモナス症(膣トリコモナス症・トリコモナス膣炎)が完治したとしても、トリコモナス症に感染したパートナーと性行為をすれば、再び感染します。トリコモナス症は「一度かかって治してしまえばもう大丈夫」といった類の病気ではありません。感染者との性行為によって、何度でも感染します。
男性は症状が出にくいので要注意
再感染を避けるポイントは、自身だけが検査して治療を行うのではなく、パートナーもいっしょに検査を受けることです。検査の結果、パートナーも感染していることがわかれば、再感染を防ぐためにもいっしょに治療を行いましょう。
男性がトリコモナス症に感染している場合は、特に注意が必要です。なぜなら女性よりも男性の方が、トリコモナス症に感染した自覚が薄いからです。これは症状のあらわれ方に起因します。おりものの見た目や匂いがわかりやすく変化する女性と違い、男性はあまり自覚症状が出ません。感染に対する自覚のなさが、別の相手に被害を拡大させてしまうのです。相手の女性がトリコモナス症にかかっていたら、男性は症状が出ていなくても、進んで検査を行いましょう。
もしあなた自身がトリコモナス症に感染している場合、(性交渉が行われたなら)パートナーが感染している可能性は8割にものぼると言われています。
ピンポン感染を起こすため、感染が判明した場合70~80%の確率で感染しているので、同時にパートナーと共に治療する必要がある。
トリコモナス症は、感染力は強いものの、しっかりと治療を行うことで完治する性感染症です。検査は、パートナーと同時期に行なうようにしましょう。
膣トリコモナスをはじめ、性感染症(STI)を早期に発見して治療するためにも、検査は非常に大切です。検査をしないとおしおきされてしまいます。注意しましょう。
トリコモナス原虫が体内に残っていた
膣トリコモナス症の症状がなくなり、完治したと思っていても治療が不十分であれば、体内にはまだ膣トリコモナス原虫が残っている場合があります。残ったトリコモナス原虫が再び悪さをしたり、移動していた原虫が膣に戻って炎症を起こすこともあります。
まとめ
膣トリコモナス症はトリコモナス原虫という寄生虫が原因で起こる性感染症です。膣や前立腺、尿路などに寄生して炎症を起こすことで、膣トリコモナス症を発症します。
トリコモナス原虫は主に膣トリコモナス症感染者とのセックスで感染します。セックスの他にも、オーラルセックス、素股でも感染します。ただし、キスでは感染しません。まれに膣トリコモナス症患者と性行為がなくても、一緒に生活を送る中で感染することがあります。お風呂や、タオルを共有して使うと感染する恐れがあります。ただし、一緒に衣類を洗濯したり、食事や食器の共有は感染しません。日常生活ではめったに感染することはないので、あまり神経質にならなくてよいでしょう。
膣トリコモナス症は再発しやすい性感染症です。再発しないためにもセックスの際はコンドームをしたり、十分な治療をしましょう。