公開日
2017/06/23
更新日
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膣トリコモナス症にかかってしまったのではないか?病院に行って検査を受けなきゃいけないとわかっているものの、過去に検査した経験がなければ、どんな検査を行うのか分からず心配ですよね。性感染症の検査では、「やっぱり性器を医師に見せるの?」「検査は痛い?」など、特に不安を感じる人が多いのではないでしょうか。

トリコモナスをはじめとする性感染症の内診や検査では、男女ともに、痛みはほとんどありません。過度な心配は無用です。この記事では、安心してトリコモナス症の検査が受けられるように、具体的な検査の流れから、検査にかかる費用まで、詳しく説明します。

膣トリコモナス症の検査の流れ

膣トリコモナス症は診察室で問診や検査をして治療をする

病院で膣トリコモナス症の検査をする際は、どのように進められていくのでしょうか。受診・検査の流れは、以下のようになっています。

  1. 問診
  2. 内診
  3. 検体採取
  4. 検査
  5. 検査結果

では具体的にどのようなことをするのか、問診から順番に詳しく説明します。

1.問診

はじめに、問診で医師からいくつかの質問を受けます。問診では、下のようなことを医師から聞かれます。

  • 自覚症状(かゆみや、排尿時に痛みがあるかなど)
  • 既往歴(過去に患った病気の経歴。アレルギーや持病、過去に性病に感染したかなど)
  • 生活習慣
  • 性行為の有無

いつ性行為をしたのかなど、質問はプライベートな内容も含まれます。これらはもちろん、適切な診断を下すために必要な情報です。正確に答えましょう。

2.内診

内診では、医師が性器の状態を確認します。患部を見て確かめる「視診」や、直接触って確かめる「触診」を行います。女性の場合、男性医師にデリケートゾーンを見られることに抵抗を持つ人が多いのではないでしょうか。どうしても抵抗がある人は、女性医師が担当している病院やクリニックを探して受診してみるとよいでしょう。

症状がまったくない場合は、内診を行わないこともあります。男性は症状が出にくいことから、内診を行わずに、検査へ進むことが多いでしょう。男女それぞれ、内診の流れを説明します。

男性が受ける内診

下着を脱いで、診察台にあがります。排尿痛などがあらわれている場合、医師が性器に直接触れて、痛みの度合いを確認します。

女性が受ける内診

内診台に上がる
膣トリコモナス症の検査は、女性だと内診台を使います

下着を脱いで、内診台に上がります。内診台は診察台と違い、足が開くようになっています。内診に緊張するという女性も少なくありませんが、なるべく力を抜いてリラックスしましょう。

消毒膣鏡で膣内の症状を確認する
膣トリコモナス症の検査は、女性だと消毒膣鏡で膣内の症状を確認する

内診台に上がったあと、膣の中に消毒膣鏡(クスコ)を挿入します。消毒膣鏡は膣の中の状態をよく見えるようにするための器具です。「こんな器具を膣に入るなんて痛そう...」と思うかもしれませんが、痛みはあまり感じません。怖がって力が入ってしまうと、余計な痛みを感じてしまうことがあるので、できるだけリラックスして内診を受けましょう。

3.検体採取

問診や内診が終わったあと、最後に検体採取をしていきます。男性は尿を、女性はおりものを採取します。検体採取はどのように行われるのか、男女それぞれ説明しましょう。

男性の検体採取

膣トリコモナス症の検査は、男性の場合尿検査です。

男性の場合、膣トリコモナス症の検査は一般的に尿検査です。トイレで尿を20ccほど、紙コップに入れます。

尿検査で注意しなければならないのが、尿の出はじめの「初尿」を採取する、ということです。初尿で多くのトリコモナス原虫が出てしまうので、尿が出ている途中の「中間尿」では、トリコモナス原虫が少なくなっています。そのため、中間尿ではなく初尿を採ることで、トリコモナスの検査が正確にできるのです。尿を入れた紙コップをトイレにある窓口に置いて終了します。

病院によっては、尿道内から直接トリコモナス原虫を採取する場合があります。その場合、医師が尿道に綿棒を入れ、尿道内をこするのです。こちらの検体採取の方法だと痛みを伴うことがあります。検査を受ける病院がどちらの検方法なのか分からず、「痛い検査だったら嫌だな...」と不安に感じるようなら、事前に電話で確認してみましょう。

女性の検体採取

女性は内診といっしょに検体を採取します。消毒膣鏡で膣の中を広げたまま、膣の奥を減菌綿棒で軽く擦り、おりものを採取します。膣の奥まで綿棒が入りますが、痛みはほとんどないので、安心してください。

4.検査

採取した尿やおりものを検査にかけていきます。病院では、はじめに「顕微鏡検査」を行います。そこでトリコモナス原虫が確認できなかった場合、次に「培養検査」を行います。それぞれ、どのような検査方法なのか詳しく見ていきます。

まず最初は顕微鏡検査

膣トリコモナス症の検査は、はじめに顕微鏡検査を行います

最初に行う膣トリコモナス症の検査は、顕微鏡検査です。顕微鏡を使って、採取した尿やおりものにトリコモナス原虫がいるかどうかを確認します。ただし、顕微鏡検査の精度はあまり高くないので、トリコモナス原虫を見落とす場合があるのです。トリコモナス原虫が確認されなかった場合は、さらに詳しい「培養検査」を行います。

トリコモナス原虫が見つからなかったら、培養検査へ

膣トリコモナス症の検査は、顕微鏡検査の次に培養検査を行います

顕微鏡検査でトリコモナス原虫が見つからなければ培養検査へ進みます。尿やおりものを培養液(菌や原虫を増やす液)に浸し、トリコモナス原虫を培養(増殖)させます。そうすることで、トリコモナス原虫が確認しやすくなるのです。培養検査は、検体からトリコモナス原虫を増やすため、見落としてしまうことはほとんどありません。そのため、顕微鏡検査と比べると、より精度の高い検査ができます。培養検査でもトリコモナス原虫が確認されなければ、膣トリコモナス症に感染していないと判断されます。

5.検査結果

顕微鏡検査でトリコモナス原虫が見つかった場合、その日のうちに検査結果が出ます。顕微鏡検査でトリコモナス原虫が見つからず、培養検査にかけた場合、検査結果はすぐに出ません。検査結果が出るまで、1週間ほどかかります。膣トリコモナス症だと判断された場合は薬が処方されるので、医師や薬剤師の説明に従って、正しく薬を使用しましょう。

検査結果がでるまでの期間

顕微鏡検査 培養検査
日数 1日(当日) 7日(一週間)

感染直後は結果が出ない!?検査のタイミングは「性行為から3日目以降」

膣トリコモナス症に感染した疑いがある場合、いつ検査を受ければよいのでしょうか。膣トリコモナス症の疑いがある人と性行為をした場合、翌日に検査しても、トリコモナス原虫が見つかる確率は極めて低いのです。

膣トリコモナス症の検査に適したタイミングは、性行為をした日から3日目以降です。性行為をした日から3日目以降であれば、トリコモナス原虫がいた場合、確実に検査で確認ができます。例えば、4月1日に性行為をした場合、3日後である4月4日以降なら、正確な検査結果が得られるでしょう。

自覚症状がなかったとしても、性行為をした3日目以降であれば、検査を受けられます。とくに、男性はほとんどの人に自覚症状がありません。自覚症状がなくても、感染した疑いがあるのなら、積極的に検査を受けましょう。

膣トリコモナス症の検査に適したタイミングは、性行為をした日から3日目以降です

また、生理中は病院へ行くのを避けましょう。おりものを採取する際に血液等が入ってしまい、正確な診断結果がでません。不正出血など、少量の出血であれば検査をしても問題ないでしょう。

病院を受診したときにかかる費用はどれくらい?

膣トリコモナス症の治療でかかる費用は、保険が適用された場合、4,000円から9,000円です

「病院に行ったらどれくらいお金がかかるんだろう...」膣トリコモナス症の疑いで病院を受診した場合、費用はいったいいくらかかるのか気になりますよね。診察費、検査費、薬代を、健康保険が「適用される(保険適用)」「適用されない(保険適用外)」場合にわけて表にしました。

保険適用 保険適用外
診察代
  • 初診:800円~1,000円
  • 再診:200円~500円
  • 初診:2,000円~3,000円
  • 再診:1,500円~2,000円
検査費 1,500円~3,000円 5,000円~12,000円
薬代 2,000円~5,000円 10,000円~15,000円
合計 4,000円~9,000円 17,000円~30,000円

※匿名で受診する際は、2回目以降も再診ではなく初診として扱われることがある。

保険が適用された場合、診察代、検査代、薬代合わせて4,000円から9,000円の費用が必要です。保険が適用されないと、17,000円から30,000円ほどかかります。このように、保険が適用される金額と適用されない金額では大きな差があるのです。

自己負担額を減らしたい人は保険で支払うことをおすすめします。ただし、クリニックによっては保険が適用されない場合もあるので、注意しましょう。クリニックを受診する際は、あらかじめ電話で保険が適用されるかどうか、問い合わせおくと安心です。

自覚症状が出ていないと保険適用外になる!?

保険診療を希望して病院やクリニックを受診しても、すべての人に健康保険が適用されるわけではありません。

膣トリコモナス症は、すべての人に健康保険が適用されるわけではありません

自覚症状があるものの、検査の結果、トリコモナス原虫が発見されなかったときは、別の性感染症に感染した疑いが出てきます。他の性感染症の検査や治療に切り替えて、健康保険が適用される保険診療が受けられます。

「自覚症状はないものの、感染の疑いがある」という理由で受診した場合は、保険適用外になってしまいます。逆に自覚症状がない状態で受診しても、検査で膣トリコモナス症と診断されれば、保険が適用される場合もあるのです。その場合、検査結果が出る前に検査費を保険適用外で支払っていたとしても、その金額から保険適用額が差し引かれて戻ってきます。

保険診療は安いけど、こんな注意点も...

膣トリコモナス症を保険診療してもらう際の注意点

先ほど表で説明したように、保険が適用される金額と適用されない金額では大きな差があります。保険診療ならお財布には優しいものの、注意点もあるのです。保険診療の注意点を詳しく紹介します。

保険診療は実名で受診するため、病院に名前が知られる

保険診療は、カルテに名前を書く際、必ず実名でなければいけません

保険診療は、カルテに名前を書く際、必ず実名でなければいけません。そのため、診察の順番がきた際に、実名で呼ばれます。病院に実名を知られたくない、実名で呼ばれるのは恥ずかしい、という人は保険での受診はおすすめしません。

保険診療は性感染症で受診したことが、家族にバレる

性感染症で病院に行ったことを家族に知られたくない人は、注意が必要です。保険で支払いをすると、家族に知られてしまう恐れがあります。なぜなら、保険診療は、後日「医療費通知書」が自宅に郵送されるからです。医療費通知書とは、自分が受けた医療の内容が記された明細書です。医療費通知書には、主に以下の内容が記されています。

  • 医療機関名
  • 受診年月
  • 受診した日数や回数
  • 診療区分(調剤、本人、家族、通院、入院など)
  • 組合の支払額
  • 自分自身の支払額

このように、医療通知書には病院名やクリニック名が記載されます。そのため、医療機関が「〇〇婦人科クリニック」や「〇〇泌尿器クリニック」のような名前だと、性感染症で受診したことが家族にばれてしまう恐れがあるのです。ただし、医療通知書には「性病科」、「婦人科」など診療科まで記載することはめったにありません。家族に隠しておきたいなら、総合病院で受診すれば、知られる可能性は低いでしょう。

自費診療は保険診療のデメリットをカバー

自費診療は保険診療に比べて、医療負担が大きいというデメリットがありますが、通院を誰にも知られたくない人にとっては匿名で受診できるメリットがあります

自費診療は保険診療に比べて、医療負担が大きいというデメリットがありますが、メリットもあります。それは、先ほど説明したような保険診療のデメリットをカバーしてくれるという点です。自費診療は、保険診療のデメリットをどのようにカバーするのか、詳しく説明します。

自費診療は匿名で受診できるため、実名を明かさない

自費診療は、カルテに名前を記載する際、実名もしくは匿名か選べます

自費診療は、カルテに名前を記載する際、実名もしくは匿名か、選べます。そのため、自分の実名が病院に知られることもなく、実名を呼ばれて気まずい思いをすることもありません。どうしても、実名を公開したくない場合は、自費診療をおすすめします。

自費診療は医療費通知書が送られてこないため、誰にもバレない

自費で受診した場合、自宅に医療通知書が送られてくることは、一切ありません。そのため、性感染症で病院を受診したことは、誰にもバレないのです。膣トリコモナス症での受診歴を隠したいなら、保険診療よりも自費で支払ったほうが安全です。

まとめ

病院で膣トリコモナス症の検査をする際、男性は尿を、女性はおりものを採取します。採取した検体を顕微鏡検査などで確認し、膣トリコモナス症に感染しているかを判断をします。

治療費を含め、病院でかかる費用は、保険適用であれば、4,000円から9,000円ほどでしょう。保険適用外なら、17,000円から30,000円ほどの費用がかかります。

自覚症状の有無にかかわらず、トリコモナス原虫が発見されれば保険診療の対象になります。また、自覚症状があってもトリコモナス原虫が発見されないこともあります。その場合は、別の性感染症に切り替えて治療が行われます。別の性感染症の治療を名目に、健康保険の適用が可能です。