
膣トリコモナス症は治療薬「フラジール」で治せる!膣錠なら妊婦の人でも安心
- ざっくりまとめると
- 腟トリコモナス症の治療薬「フラジール」は内服錠と膣錠の2種類。妊婦や授乳婦は膣錠が基本!
- フラジールを使うときはお酒を飲まない!他に飲んでいる薬があったら医師に相談すること
- フラジールは泌尿器科や性病科で処方を受けるか、個人輸入を利用して購入できます。
「膣トリコモナス症の治療薬にはどんな薬を使うの?」「トリコモナスの治療薬はどこで売ってる?」など、膣トリコモナス症に感染したとき、どのような治療薬があるのか、どこで薬が手に入るのか、分からない人は多いのではないでしょうか。
腟トリコモナス症の治療には、抗寄生虫薬のフラジールが使われます。内服錠と膣錠の2種類があり、妊婦や授乳婦の人でも安心して使えます。
膣トリコモナス症の治療薬は、ドラッグストアで市販されていません。病院で処方してもらうか、個人輸入で購入する必要があります。
この記事では、フラジールの特長から注意点、処方してもらえる病院まで、詳しく紹介します。
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治療薬「フラジール」は内服錠と膣錠の2種類
膣トリコモナス症治療にはフラジールが使われます。フラジールには飲み薬の内服錠と、膣の中に入れて使う膣錠があります。
内服錠と膣錠のそれぞれの使いかたから、フラジールが効果を発揮するメカニズムまで、詳しく見ていきましょう。
フラジールの使いかた
フラジールは内服錠と膣錠の2種類があり、それぞれ使いかたが異なります。
内服薬は水と一緒に服用します。
フラジール錠250mgの飲みかた
- 薬を飲む期間: 10日間
- 1回に飲む量: 1錠
- 1日に飲む回数: 2回
フラジール膣錠は、錠剤を膣内に直接入れるタイプの薬です。膣内の分泌液によって溶け、患部にダイレクトに作用します。
フラジール膣錠250mgの使いかた
- 薬を飲む期間: 10日間から14日間
- 1回に飲む量: 1錠
- 1日に飲む回数: 1回
添付文書には、薬剤を使用するタイミングや時間帯は記載されていません。処方されたときに、医師や薬剤師に指示を仰ぎましょう。
フラジールを10日間使っても、症状に改善が見られない場合、まずは医師に相談しましょう。フラジール内服錠の場合、10日間飲んでも症状が改善しなれけば、一旦服用を中止し、1週間あいだを置いたあとに、また服用を再開します。フラジール膣錠の場合、休止期間を取らず、そのまま4日間服用します。
フラジールが膣トリコモナス症を治すメカニズム
フラジールは、なぜ膣トリコモナス症の治療に適しているのでしょうか。その理由は、有効成分である、「メトロニダゾール」にあります。
メトロニダゾールはトリコモナス原虫の中に入り込むと、「ニトロソ化合物(R‐NO)」という物質に変化します。このニトロソ化合物は、トリコモナス原虫のDNAを切断する作用があるのです。
DNAは、生物の体を作る設計図のようなものです。DNAが切断されると、体の構造が不安定になり、トリコモナス原虫は死滅します。
このようなメカニズムから、フラジールは腟トリコモナス症の治療に有効なのです。
妊娠初期の妊婦や授乳婦はフラジール膣錠を使う

妊娠初期や授乳中は、基本的にフラジール膣錠が使われます。フラジール膣錠のメリットは、内服錠と比べて、胎児や新生児への安全性が高いことです。
フラジール膣錠は、成分がわずかに母体の血中に移行するだけで、胎児や新生児、乳児には影響を及ぼさないという報告があります。
腟座薬を用いた妊娠初期および後期の検討では、妊娠後期でわずかの血中移行が認められたのみであり、安全性での局所療法の優位性がみられている。
膣トリコモナス症の症状がひどい場合、妊娠初期や授乳中でも、フラジール内服錠を処方される場合もあります。しかし、よほど症状が悪化していない限り、膣錠を使うのが基本です。
妊娠初期の妊婦や授乳婦は内服錠はNG!

フラジールを妊娠中や授乳中に使用することで、赤ちゃんに影響がないのか、とても心配ですよね。
妊娠初期(12週未満)の妊婦や授乳婦は、フラジール内服錠を服用できません。なぜなら、妊娠初期や授乳中の服用は、お腹の赤ちゃんや新生児、乳児に対する安全性が明確に分かっていないからです。
一方、妊娠して14週以上経っている妊婦であれば、フラジール内服錠を使用しても問題ないことが報告されています。
なぜ、妊娠初期や授乳中の服用は、赤ちゃんにとって安全だと言い切れないのでしょうか。理由を詳しく説明します。
妊娠初期に内服錠を使ってはいけない理由

妊娠初期(12週未満)の妊婦にとって、フラジール内服錠の服用が危険な理由は、3つ挙げられます。
妊娠初期の妊婦がフラジール内服錠を使えない理由
- フラジールには発がん性がある
- 妊娠初期の胎児は体の機能が未熟
- 妊娠初期の妊婦にフラジールを投与した実績がない
フラジールには発がん性がある
妊娠初期にフラジール内服錠を服用してはいけない理由のひとつが、有効成分のメトロニダゾールがもつ発がん性です。
メトロニダゾールは体内でニトロソ化合物(R‐NO)という物質に変化します。このニトロソ化合物には発がん性があるのです。
動物用医薬品専門調査会の資料には以下のような記述があります。
EMEAでは、メトロニダゾールは、動物に対して、遺伝毒性発がん性物質とみなされるとしており、この見解は、メトロニダゾールをグループ2B”possibly carcinogenic to humans(ヒトに対して発がん性の可能性がある)”に属する物質に分類した国際癌研究機関(IARC)と一致する
EMEAとは、欧州医薬品審査庁のことです。仮にフラジールを10日間より長く飲んだからといって、すぐにがんになってしまうわけではありません。しかし、安全のため、連続して服用する期間は10日間と決まっています。
日本性感染症学会が発行しているガイドラインにも、以下のように記載されています。
ニトロイミダゾール系の薬剤は、その構造内にニトロ基をもっており、発ガン性が否定できないとされている。そこで、1クールの投与は 10日間程度にとどめ、追加治療が必要なら1週間はあけることとする。
ニトロメタゾールは、「ニトロイミダゾール系」の薬に分類されます。
ただでさえ発がん性がある物質なので、胎児の安全を考慮し、妊娠初期の妊婦妊婦はフラジールを使わないことになっているのです。
妊娠初期の赤ちゃんは、体の機能が未完成
フラジールは、妊娠初期の妊婦を対象にした試験が行われていません。ですが、フラジールを経口投与すると、メトロニダゾールが胎盤を通じて胎児に移行することがわかっています。妊娠初期の胎児は、体の機能が未発達の状態にあるため、メトロニダゾールによって発育に悪影響を受ける可能性があるのです。
妊娠中のフラジールの使用について、日本感染症学会のガイドラインからの引用文をもとに、詳しく説明していきます。
メトロニダゾールは、胎盤を通過し胎児へ移行するので、原則として妊婦への経口投与は避けるが、最近の報告では第二3半期、第三3半期での安全性は確立されていると考えられている。
引用文から分かるように、フラジールを経口投与すると、成分が胎盤を通して胎児に移行します。
胎児は、妊娠4週から7週までは、臓器が作られる絶対過敏期とされています。それ以降も、14週以降までは過敏期を過ぎた直後です。発がん性はもちろんですが、胎児の正常な発育に対する心配も出てくるため、妊娠初期の服用は控えなければいけないのです。
妊娠14週から27週、28週以降の胎児には、成分が移行しても問題ないとされています。この頃になれば、胎児の体や臓器はほとんど完成しているからです。
授乳中に内服錠を使ってはいけない理由

授乳中にフラジール内服錠を使用すると、母乳を飲む新生児や乳児に、なにかしらの悪影響を及ぼす可能性があります。母体が摂取したメトロニダゾールは、母乳に移ってしまうことが試験結果で分かっています。また、新生児や乳児がメトロニダゾール摂取した場合の試験データはないため、安全性が確立されていないのです
胎児に対する安全性は確立していないので,有益性が危険性を 上回ると判断される疾患の場合を除き,特に妊娠 3 ヵ月以内は 経口投与をしないこと。[経口投与により胎盤関門を通過して胎 児へ移行することが報告されている。(「薬物動態」の項参照)]
授乳中の婦人に投与する場合には授乳を中止させること。[母乳 中へ移行することが報告されている。(「薬物動態」の項参照)]
妊娠14週が経過した胎児なら薬の成分が移行しても問題ないとされています。このことから、胎児に比べて体が成長している新生児や乳児ならば、薬の成分を摂取しても問題ないと考えられるかもしれません。
しかし、新生児や乳児が、母乳からメトロニダゾールを摂取した場合の安全性は、まだはっきりとしていません。
胎盤と母乳では、赤ちゃんがメトロニダゾールを摂取する方法が異なります。母乳に含まれるメトロニダゾールはごくわずかであっても、乳児がそれ飲んだときに問題がないとは言い切れません。
そのため、授乳中にフラジール内服錠を飲むことは勧められないのです。

フラジール内服錠を服用する際に注意すべき飲み合わせ
フラジール内服錠を服用している間は、お酒を控えましょう。また、フラジール内服錠と併用してはいけない治療薬もあります。フラジール膣錠であれば、全身への影響は少ないので、他の治療薬との併用は問題ありません。
では、フラジール内服錠を服用しているときにお酒を飲んではいけない理由や、内服錠と併用してはいけない治療薬を詳しく見ていきましょう。
フラジール服用中のアルコールはNG!

フラジール内服錠を服用している期間は、アルコールを飲んではいけません。なぜなら、フラジールを服用している間にアルコールを摂取すると、吐き気や頭痛、顔が異常に赤くなるなど、さまざまな症状が起こるからです。また、日頃から過度にお酒を飲む習慣がある人は、薬の作用が増減し、十分な治療ができない可能性もあるのです。
フラジール内服錠を服用しているときにお酒を飲むと、体内でどのような作用が働くのでしょうか?体に悪影響を及ぼすメカニズムから、薬の作用が増減してしまう原因まで、順番に見ていきましょう。
頭痛や吐き気はアルコールが分解されなくなるのが原因
頭痛や吐き気は、フラジールの成分が、アルコールの分解を阻害することが原因です。では、詳しい作用を知るために、体内でアルコールが分解される仕組みをイラストで見てみましょう。

上の図からわかるように、アルコールは「アセトアルデヒド」、「酢酸」、「水や二酸化炭素」の順番で分解されていきます。このうち、アセトアルデヒドには毒性があり、頭痛や吐き気を引き起こす原因となるのです。
毒性のあるアセトアルデヒドを無害な酢酸に分解するには、「アルデヒド脱水素酵素」が必要です。しかし、フラジールの成分には、このアルデヒド脱水素酵素の働きを弱める作用があります。アルデヒド脱水素酵素の働きが弱まれば、アセトアルデヒドはうまく分解されません。その結果、体内でアセトアルデヒドの濃度が高くなり、体に悪影響を与えるのです。
フラジールの作用によって、毒性のあるアセトアルデヒドの血中濃度が高まってしまい、二日酔いのような状態になります。その結果、吐き気や頭痛といった症状が引き起こされるのです。
過度な飲酒が薬の作用を増減させる
なぜ、日頃から過度にお酒を摂取している人は、薬の作用が増減するのでしょうか。それは「薬物代謝酵素」の働きが関係しています。薬物代謝酵素とは、主に肝臓に存在しており、薬物を体外へ排出する働きをします。この薬物代謝酵素の働きによって、薬の成分が体内で十分に効果を発揮したあと、体外へ排出されるのです。しかし、アルコールを過度に摂取する習慣があると、薬物代謝酵素の働きが増減します。その結果、薬を飲むと効果が強く出すぎて副作用が出たり、効果が十分に発揮されなかったりするのです。
フラジールの作用が強まる場合
お酒を飲んですぐにフラジールを服用すると、薬の効果が強まります。なぜならお酒を飲むと、薬物代謝酵素がアルコールの分解を手伝うからです。薬物代謝酵素がアルコールの分解にかかりきりになるため、本来の薬物を代謝するという働きが弱まっています。その結果、薬の成分が体から排出されずに留まってしまい、作用が強まってしまうのです。フラジールの作用が強く出てしまうと、副作用が出やすくなったり、症状が強くなったりします。
フラジールの作用が弱まる場合
日々お酒を飲みすぎている人は、お酒を飲んでいないときにフラジールを飲むと、効果が弱まってしまいます。過度なお酒を飲み続けていると、アルコール代謝酵素だけでは代謝が追いつかず、薬物代謝酵素がアルコールの代謝を助けます。それを続けていると、薬物代謝酵素の代謝能力がどんどん高まります。結果、薬を飲んでも薬物代謝酵素が必要以上に成分を代謝してしまうようになるのです。日頃からお酒を多量に飲んでいる人がフラジールを飲むと、成分が分解されすぎてしまい、フラジールの効果が弱まってしまうのです。
あまりお酒を飲まない人も要注意!
自分では「少ししかお酒を飲んでいないから大丈夫」と思っていても、少量の飲酒でフラジールの作用が増減する可能性があります。それは、人によってアルコール代謝酵素の量にも差があり、もともと量が少ない人もいるからです。アルコール代謝酵素が少ないと、わずかなアルコールでも、酵素の働きが変化してしまいます。
このように、お酒はフラジールの作用にさまざまな悪影響を及ぼします。フラジール内服錠を服用している期間は、できる限りお酒は控えましょう。
フラジールとの併用に注意が必要な薬

フラジール内服錠を服用している間は、他の医薬品との併用にも注意が必要です。どのような医薬品がフラジールの作用に影響するのか、リストで見ていきましょう。
フラジール内服錠と併用注意の薬
- リトナビル含有製剤(HIV治療薬)
- ジスルフィラム(アルコール中毒治療薬)
- ワルファリン(血栓寒栓症治療薬)
- リチウム(躁病、躁うつ病治療薬)
- ブスルファン(慢性骨髄性白血病、真性多血症治療薬)
- フルオロウラシン(ガン治療薬)
- シクロスポリン(臓器の移植の際に用いる治療薬)
- フェノバルビタール(不眠症治療薬)
上の薬とフラジール内服錠を併用すると、お互いの薬の効果が強くなったり、弱くなったりする可能性があります。その結果、相互作用によって重い副作用が出たり 、薬の効果が発揮されず、病気を治療できなくなったりする恐れがあるのです。フラジールとほかの治療薬を併用する必要がある場合は、必ず医師に相談しましょう。
膣トリコモナス症の市販薬は販売されていない

「トリコモナスに感染したことを家族に知られたくない……」「病院に行かずに治せないの?」運悪くかかってしまった膣トリコモナス症は、誰にも知られないように市販薬で治療できるのでしょうか?
残念ながら、膣トリコモナス症の治療薬はドラッグストアや薬局では手に入りません。2011年まで、「強力トリコマイシンG(第一三共ヘルスケア)」という膣トリコモナス症の市販薬が販売されていましたが、現在では販売を中止しています。そのため、膣トリコモナス症を治療するためには、国内の医療機関か、個人輸入を扱っている通販サイトを利用して、医薬品を購入する必要があります。
腟トリコモナス症の治療薬は基本的に病院で処方を受ける

膣トリコモナス症を治療するには、病院へ行って検査を受け、薬を処方してもらうのが基本です。「性感染症で病院へ行くのは恥ずかしい」と感じるかもしれませんが、腟トリコモナス症は放置しても自然と治ることはありません 。むしろ、放置すると症状が悪化し、治療に時間がかかってしまいます。膣トリコモナス症は、きちんと治療をすれば、ほとんどの患者が7日間で完治します。
メトロニダゾール治療群(臨床効果:7 日間経腟投与 84%、7 日間経口投与 84%、10 日間経口投与 90%、単回投与 80%)
少しでも自覚症状があるなら、恥ずかしがらず、早めに病院を受診しましょう。
性病科と泌尿器科を受診!妊婦の人は産婦人科へ

膣トリコモナス症の感染が疑われる場合、性病科、泌尿器科(女性なら婦人科や産婦人科も)のいずれかを受診しましょう。

陰部のかゆみや、尿道の痛みなど、性器周辺に関する悩みなら、どの診療科目を受診しても治療が受けられます。ただし、妊娠している女性は、産婦人科を受診しましょう。産婦人科は、母体や胎児への影響に精通しているため、お腹に赤ちゃんがいても安心して受診できます。
性病科の受診に抵抗がある場合は、男性は泌尿器科を、女性は婦人科を受診するとよいでしょう。婦人科や泌尿器科は、性病にかかった人以外も受診している診療科です。「待ち時間が気まずい」「領収書に性病科と記載されたくない」と思う人は、泌尿器科や産婦人科を受診しましょう。
膣トリコモナス症の治療薬まとめ
フラジールは腟トリコモナス症の治療薬です。内服錠と膣錠の2種類があります。妊娠中、または授乳中の女性は、膣に直接入れるタイプのフラジール膣錠を使用しましょう。妊婦や授乳婦が内服錠を服用すると、赤ちゃんに悪影響を及ぼす恐れがあります。
フラジール内服錠を服用する際は、飲酒に気を付けましょう。フラジール内服錠を服用している期間中にアルコールを飲むと、吐き気や頭痛といった副作用を引き起こします。それだけでなく、薬の作用が弱まり、十分な治療ができない可能性もあるのです。また、お酒だけでなく、ほかの医薬品との飲み合わせにも注意しなければなりません。副作用が出やすくなる場合もあるので、ほかの薬とフラジール内服錠を併用する場合、必ず医師に相談しましょう。
膣トリコモナス症には、ドラッグストアなど販売されているような市販薬はありません。トリコモナスを治療するなら、病院で処方せん薬を購入しましょう。