
高濃度のアジスロマイシンが細菌だけを攻撃!ジスロマックの作用
ジスロマックは、アジスロマイシンを有効成分とするマクロライド系の抗菌薬です。主にクラミジアや淋菌、マイコプラズマといった細菌による感染症の治療薬として用いられます。
では、どうしてジスロマックを飲むと細菌感染症が治るのでしょうか?有効成分であるアジスロマイシンは、どうして病原菌を抑えることができるのでしょうか?
アジスロマイシン(ジスロマック)は体内でどのように作用するのか、病原菌の増殖をどのように抑え込むのかを知りましょう。
ジスロマック(アジスロマイシン)の作用機序
ジスロマックの有効成分「アジスロマイシン」は、15員環マクロライド系抗菌薬の1つです。
15員環マクロライド系の抗菌薬はアジスロマイシンだけしかありません。ほかのマクロライド系抗菌薬にはエリスロマイシンやクラリスロマイシンがあります。
マクロライド系の抗菌薬は副作用が少なく、殺菌作用よりも菌を抑える作用を持ちます。アジスロマイシンは、クラミジアや淋菌感染症の治療薬として用いられます。
アジスロマイシンは体の広範囲にとどく
アジスロマイシンは胃酸にあまり影響されないので、体内の組織や細胞へ移行しやすい抗菌薬です。特にマクロファージ(貪食細胞)に取り込まれやすいのが特徴です。
マクロファージとは体内の異物を取り込み、分解する細胞のことです。病原菌の毒性をなくし、感染から体を守る役割を果たします。アジスロマイシンはマクロファージに取り込まれた後でも、細胞内にとどまることができます。
マクロファージがアジスロマイシンをためこみ、組織間を自由に移動することで、病原菌に対して効果的に作用します。マクロファージに取り込まれることで、濃度の高いアジスロマイシンが感染部位に届くのです。血中濃度に比べると、細胞内では10倍から100倍の濃度になっています。
アジスロマイシンは細菌だけを攻撃する
抗菌薬はヒトの細胞には無害で、細菌だけに毒性を発揮します。これを選択毒性といい、アジスロマイシンも選択毒性によって細菌の増殖を抑えるのです。
アジスロマイシンには、細菌細胞のリボソームと結合し、タンパク質の合成を邪魔する作用があります。リボソームはいわばタンパク質製造工場です。つまり工場であるリボソームの働きを抑えてしまえば、タンパク質の製造も抑えられることになります。
タンパク質は細菌の細胞壁を作っている主成分なので、タンパク質の製造を抑えれば、細菌の増殖も抑えられるのです。ヒトにもリボソームがありますが、細菌とは種類が違います。アジスロマイシンは細菌のリボソームを選択して結合し、発育を抑えることができるのです。

アジスロマイシンは血中濃度を保つことで効果を発揮する(時間依存性)
抗菌薬は作用のタイプで2種類に分けられます。「濃度依存性」と「時間依存性」です。濃度依存性の抗菌薬は血中濃度が高ければ高いほど、短時間でも細菌によく効きます。時間依存性の抗菌薬はどれだけ血中濃度を高くしても、一定のところで効果が横ばいになります。
アジスロマイシンは時間依存性の抗菌薬なので、菌の増殖を抑える最低限の血中濃度を保つことが重要です。一定の濃度を保つことができればよいので、たくさん飲みすぎても意味がありません。加えて、アジスロマイシンは1回の服用で長い時間効果が続きます。アジスロマイシンを500㎎服用することで、約68時間に渡って効果が持続するのです。そのため、何度も服用しなくても効果が発揮されます。
ジスロマックは副作用の少ない空腹時に飲む
ジスロマックは基本的に経口(飲み薬)で、空腹時に服用します。なぜなら、食後に服用すると消化管の副作用が出やすくなるからです。空腹時に服用したときよりも、食後に服用したほうがアジスロマイシンの最高血中濃度が高くなります。アジスロマイシンの血中濃度が高くなりすぎると、消化管に負担がかかるのです。アジスロマイシンの副作用には下痢や吐き気が多く、それを避けるために空腹時に服用します。
まとめ
ジスロマックはクラミジアや淋菌感染症の治療に用いられる抗菌薬です。ジスロマックを飲むことで、有効成分のアジスロマイシンが細菌の増殖を抑えます。アジスロマイシンは体内の組織や細胞に移行しやすく、特にマクロファージに取り込まれることで、効果的に作用するのです。マクロファージに取り込まれたアジスロマイシンは、選択毒性によって細菌のタンパク質合成を邪魔します。
アジスロマイシンは時間依存性の抗菌薬で、一度に血中濃度を高くしすぎてもあまり意味がありません。食後に服用すると血中濃度が高くなりすぎるので、下痢や吐き気といった副作用が出やすくなります。副作用が出ることはまれですが、服用の際は気をつけましょう。